研究課題/領域番号 |
19K11450
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
木目 良太郎 東京医科大学, 医学部, 講師 (90366120)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 近赤外線分光法 / 自転車運動 / 脂肪組織 / 散乱係数 |
研究実績の概要 |
近赤外線分光法(NIRS)を用いて筋機能を評価する際には皮下脂肪の影響を補正する必要があるにもかかわらず、その殆どの論文で皮下脂肪厚の影響が補正されていない。そこで本研究では、測定対象領域(皮下脂肪も含めた筋組織)の散乱媒質が個体間で均一化するように、予め設定した散乱係数の基準値とほぼ同値となるように脂肪ファントムを皮膚上に貼付した状態で運動時の組織酸素濃度変化を計測し、筋組織での酸素の取り込み能力の定量的評価を行うことを目的とした。本年度は自転車運動時でも形状が崩れない脂肪ファントムの制作に注力した。これまでに光計測分野で使用されている脂肪ファントムは、培地用寒天にイントラリポスを混ぜて作成するが、この方法で作成した脂肪ファントムで自転車運動を行った場合、運動時に発生する熱とNIRSプローブの固定による外的圧迫により、ファントムが分離して崩れることが判明した。そこで培地用寒天の代わりに、弾力性が強く分離しにくい歯科用寒天を用いて脂肪ファントムを作成したが、この歯科用寒天のファントムでも高強度運動時には分離して形が崩れることが判明した。自転車運動時の熱産生とプローブ固定の圧迫に耐えうる脂肪ファントムを作成するのは困難という結論を出し、脂肪ファントムを厚さ1mmのプラスティック容器に詰めた状態で自転車運動を行ったところ、脂肪ファントムが分離せずに実験することが可能となった。次年度からはヒト被験者の大腿部に脂肪ファントムを貼付して実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究実績でも述べたが、脂肪ファントムの作成に大幅な時間を要したことが挙げられる。これまでに光計測分野で使用されている脂肪ファントムは、基本的に培地用寒天を用いるが、この培地用寒天で作成した脂肪ファントムを用いて自転車運動を行った場合、運動時による熱産生とプローブ固定による外的圧迫の影響で、ファントムが分離して崩れることが判明した。培地用寒天の代わりに、様々な弾力性の歯科用寒天を用いて脂肪ファントムを作成したが、この歯科用寒天のファントムでも高強度運動時には分離して形が崩れることが判明した。以上のように、本研究の肝である脂肪ファントムの制作に思った以上の時間を要してしまい、実験予定に遅れが生じてしまったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
厚さ1mmのプラスティック容器に詰めた脂肪ファントムを、散乱係数が基準値に達するように外側広筋上に貼付し、そのファントムの上からTRS装置の送光部と受光部を装着した状態で自転車エルゴメータによる運動負荷を実施する。本実験で得られた最高酸素摂取量(VO2peak)を計測し、運動時における組織酸素濃度の変化量(ΔOxy)との関連について検討する。散乱媒質を均一化したΔOxyとVO2peakとの関係に比べて、皮下脂肪厚の影響のみを補正したΔOxyや皮下脂肪厚の影響を補正しないΔOxyとVO2peakとの関連についても併せて検討する。 また、脂肪ファントムを用いて皮下脂肪の厚さが運動終了後の再酸素化時間に及ぼす影響についても検討する。本実験で皮下脂肪厚が運動終了後の再酸素化時間に与える影響がないことが証明されれば、これまで皮下脂肪厚の影響で除外されていた女性に対しても応用可能となり、幅幅広い対象に対してNIRSによる筋機能計測が可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
運動時に発生する熱、およびプローブ固定の圧迫により、本研究の肝である脂肪ファントムの制作がなかなか上手くいかず、何度も試行錯誤したことで多大な時間を要したことで、ヒト被験者の実験が出来なかったことが最大の原因である。脂肪ファントムの制作は終了したので、次年度からはヒト被験者へのフェーズに進めるので、謝金や人件費が必要になってくると思われる。ただ、COVID-19の流行に伴いヒトを対象とした実験が大幅に制限される可能性も否定できない。
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