被災した地域スポーツクラブにおけるレジリエンスの担い手のライフヒストリー分析

2020 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K11453
• 研究機関: 桐蔭横浜大学
• 研究代表者: 吉田 毅 桐蔭横浜大学, スポーツ健康政策学部, 教授 (70210698)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 東日本大震災 / 地域スポーツクラブ / スポーツ少年団 / レジリエンスの担い手 / ライフヒストリー / スポーツ愛

研究実績の概要

東日本大震災（以下「3.11」）で被災した地域スポーツクラブの復興要因の深層について、レジリエンスの担い手のライフヒストリー分析を通じて解明するために、2020年度は宮城県Ｙ町沿岸部の小学校を活動拠点としていたサッカースポーツ少年団（以下「Ａスポ少」）を対象にフィールドワーク（現地調査）を実施した。当初計画では対象クラブは2つであったが、新型コロナウィルス感染症の問題により調査を実施できたのはＡスポ少に留まった。それについては当初計画通り、詳細なデータを得るべく監督Ｋ氏およびヘッドコーチＩ氏に対し計10回ほどインタビュー調査を行った。また、Ａスポ少の活動視察も2回行った。
Ｙ町の沿岸部は3.11で壊滅的な被害を受けた。Ａスポ少は、関係者に人的被害はなかったが、上記小学校が津波で全壊状態となり活動の場を失った。メンバーと指導者のほとんどが自宅を失い（Ｋ氏は職場も失った）、暫くは町内で避難所生活を送ったが、Ａスポ少の活動再開は比較的早く4月初旬であった。Ｙ町の気質は「過ぎたことを引きずらずさっぱりしている」（Ｋ氏）という。そんな中で、大規模避難所の前に町営グラウンドがあり、サブコーチ（メンバーの叔父）が内陸部在住で被災せず余裕があったこと、Ｋ氏が再開に積極的であり、そのコーチに再開を促したことが早期再開の鍵であったとみられる。Ｉ氏も言うように、Ａスポ少のレジリエンスの担い手はＫ氏であったとみてよい。Ｋ氏が自身も甚大な被害に遭いながらレジリエンスを発揮し得たのは、まず氏のサッカー愛が甚だ大きく、自身の「財産」というサッカーを子ども達に伝えていきたいとの思いが強かったことによるとみられる。そうした思いの源泉を探るために氏のライフヒストリーインタビューを重ねると、子どもの頃からのサッカー経験、特にサッカー強豪高校における仲間との関係性がサッカー愛の源泉となっていることが分かった。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年度は新型コロナウィルス感染症の問題によりフィールドワークの実施が困難であった。そのため、フィールドワークは当初計画の半分ほどしか実施できなかった。2021年度も同様の事態が予測されるため、研究期間の1年の延長を考えている。

今後の研究の推進方策

本研究はフィールドワークを方法とするが、2021年度も新型コロナウィルス感染症の問題により、現地へ訪問する機会が当初計画より少なくならざるを得ないことが予測される。研究の目的や内容の変更は考えていないが、必要に応じてフィールドワークを一部集中的に実施（1回の訪問で数回のインタビュー調査を実施）することを考えている。そのため、対象はそうしたフィールドワークが可能なクラブとする必要があるが、2021年度に対象とする予定であった2つのクラブのうち1つに問題が生じた。そのため、代替とするクラブを再選定している状況であるが、候補は複数あり選定は問題なく終えることができる見込みである。ただし、上述の通り2021年度もフィールドワークを当初計画通りに実施することは難しく、2020年度に実施できなかったフィールドワークを2021年度に実施するには無理がある。そのため、研究期間を1年延長し、急くことなく丁寧にフィールドワークを実施する所存である。

次年度使用額が生じた理由

2020年度は新型コロナウィルス感染症の問題により、当初計画通りにフィールドワークを実施することが困難であり、実施できたフィールドワークは概ね半分に留まったために次年度使用額が生じた。実施できなかったフィールドワークは、研究期間を1年延長して実施する計画である。