研究課題/領域番号 |
19K11453
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
吉田 毅 中京大学, スポーツ科学部, 教授 (70210698)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 東日本大震災 / 復興要因 / レジリエンスの担い手 / 地域スポーツクラブ / 障害者スポーツ / 車いすマラソン / スポーツ少年団 / ライフヒストリー |
研究実績の概要 |
東日本大震災(以下「3.11」)で被災した地域スポーツクラブの復興要因の深層について、レジリエンスの担い手のライフヒストリー分析を通じて解明するために、2021年度は宮城県N市を拠点としていたA車いすマラソンクラブ(以下「Aクラブ」)と、H市を拠点としていたBサッカースポーツ少年団を対象にフィールドワーク(現地調査)を実施した。コロナ禍のため進捗は当初計画の7割ほどに留まった。以下では、ほぼデータを収集した前者の知見について概要を示す。レジリエンスの担い手である代表O氏(1968年生)に7回、メンバーT氏(1960年生)に2回、インタビューを実施した。 Aクラブは1980 年代から沿岸部の運動施設で週末に10人ほどで活動してきた。2000年代半ば、O氏をリーダーとして組織化し現在に至る。人数は増減を経て3.11時は6人であった。3.11では関係者に人的被害はなかったが、上記施設が津波で壊滅した。O氏は生活が落ち着いてきた5月初旬、メンバーの近況等をメールで確認した。皆が活動再開を求めていたため、O氏は内陸部の市道を下見し、活動可能であることを認めた。5月末に活動を再開し、徐々に盛んな活動状態に戻っていった。O氏が活動再開を牽引したのは「まとめ役として、仲間のためにも…自分がやらないと」といったAクラブへの使命感による。その深層(出所)を捉えるべくO氏のライフヒストリー分析を行うと、それはO氏が自衛隊に務めていた1990年代初頭に遡る。当時、O氏は事故で両下肢不自由となり、不安に駆られる中で車いすマラソンを知った。間もなく他者の支援を得て走ってみた。「気持ち」よく「走れるのが嬉しかった」という。車いすマラソンは「やりがい」「生きるための活力」となった。O氏はリーダーとなった際、自身と似た境遇にある「仲間のためにも」と使命感を抱いた。これが3.11の際にも発揮されたとみられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の2年目となる2020年度から、コロナ禍によりインタビューを主とするフィールドワーク(現地調査)を当初計画通りに進めることが難しくなった。実際に進捗は、2020年度は5割ほど、2021年度は7割ほどに留まった。そのため、研究期間を1年延長させて頂くこととなった。また、当初計画で調査対象に挙げていた一部の地域スポーツクラブの活動も困難となり、調査対象の変更を余儀なくされた。具体的には、成人女子スポーツクラブをスポーツ少年団へ変更するに至った。これによりスポーツ少年団の事例が増えることとなったが、もとより3.11における被災と復興をめぐり、震災弱者側とみられる子どもの様相に関する知見を蓄積していくことは非常に重要である。そのため、本研究はこうした当初計画とは別の点での意義も有することになるとみられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、残された2つの地域スポーツクラブ(スポーツ少年団)を対象にフィールドワーク(現地調査)を実施する計画である。1つについては前年度、既に5割ほど調査を終えており、本年度は前年度と同程度にフィールドワークを実施することができると見込まれるため、本年度で当初計画を終了することに問題はないと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の2年目となる2020年度よりコロナ禍のため、本研究の方法であるフィールドワーク(現地調査)を当初計画通りに実施することができなかった。次年度使用額が生じたのはこうした理由による。2022年度は、主として残された2つの地域スポーツクラブ(スポーツ少年団)を対象とするフィールドワークに当該助成金を使用し、本研究を終了する計画である。
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