近年、女性アスリートの三主徴(Female Athlete Triad:以下,FAT)という、女性アスリートなら誰でも陥る危険性のある3つの症状(利用可能エネルギー不足、運動性無月経、骨粗鬆症)を示す重大な健康問題への対応が求められている。 特に、女性アスリートは男性アスリートよりも指導者に対する依存性が高く、問題の解決を指導者頼りにする傾向が強いという。そのため、女性アスリートが、自身の心身の健康問題に対して積極的に改善のために働きかけるなど、主体的に自己管理をすることが重要である。しかし、これまでの研究の中で、指導者への依存性が食行動異常傾向を高め、不健康な食行動による栄養状態の偏りや慢性的なエネルギー不足に陥ることで健康問題を深刻化させている現状があることが明らかになった。そして、指導者の指示に従って不健康な食行動をとることが慣例化している様相が見受けられた。 そこで、今年度は、不健康な食行動を引き起こす可能性のある減量における目標志向性(特定の目標を達成しようとする個人の傾向)の内容を明らかにし、FATの有無による得点の差の検討を行った。その結果、「健康的な課題志向性(例:必要な栄養素をバランスよく摂取して減量できたとき)」「自我志向性(例:他の人より短期間で痩せたとき)」「不健康な課題志向性(例:極端な食事制限(たとえば絶食など)で減量できたとき)」が抽出された。さらに、FATの状態にある者は、減量するという目標に対して努力をして達成しようとするが、健康的な方法で計画的に減量しようとするのではなく、不健康な方法でも結果的に減量できればよいとする傾向が高い結果が認められた。また、FATの状態にある者に対しては、体重増加への不安や恐怖心を取り除くことが第一であり、指導者らが過剰なプレッシャーを与えるようなことがあれば、減量に対する指導の在り方を見直す必要性が示唆された。
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