研究課題/領域番号 |
19K11461
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
小宮 秀明 宇都宮大学, 共同教育学部, 教授 (30186811)
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研究分担者 |
黒川 修行 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (30431505)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 筋内脂肪 エコー強度 / 多周波インピーダンス / 内臓脂肪面積 / HU値 / 筋内脂肪 / インスリン抵抗性 / 位相角 |
研究実績の概要 |
2型糖尿病の発症には内臓脂肪の過剰蓄積と並んで骨格筋内に蓄積した異所性脂肪,すなわち筋内脂肪によってインスリン抵抗性を惹起されることが知られている.X線CT装置による内臓脂肪面積の評価と同様,何れかの測定方法を用いて筋内脂肪を評価する必要性が高まってきている.これまで筋内脂肪の評価にはH-MRS法やX線CT装置を用いた研究報告が散見される.しかし,これらの測定は有資格者のみ測定が可能であるなど簡便性・汎用性に欠けることから,その代用指標として超音波エコーによるエコー強度を指標とした研究が実施されている. 本研究室ではこれまで多周波インピーダンス装置を用いた筋内情報の研究を進めている.今回は組織の脂肪量を強く反映することが報告されているインピーダンス値,これらを基にCole-cole円弧則による細胞内・外抵抗,インピーダンスとレジスタンスによって算出された位相角について測定を実施した.エコー強度,インピーダンス値,細胞内・外抵抗,位相角がX線CT装置を妥当基準として求めたCT値の代用指標になり得るものかを検討するものである. 令和元年度は全ての測定を20歳以上の男子25名を用いて実施した.令和2年度は新型コロナの影響で大学校内での被験者による測定およびX線CT検査も病院での検査ができなくなった.令和3年度は令和元年度の測定と同様の測定を20歳以上の男性35名の被験者として実施した.今回の報告では2年間分の60名を対象に集計解析を実施した.その結果,外側広筋におけるCT値の多寡別に見た細胞内抵抗及び位相角とこれらの関連性から妥当基準であるCT値の代用指標になり得る可能性が示唆された測定項目は,細胞内抵抗及び位相角が抽出された.特に臨界周波数周辺におけるV-I電極間隔3cmの位相角は,CT値と他の測定項目との相関よりも高い相関が得られ,引き続き症例数を増やし検討を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
科学研究費研究期間(3年計画)の1年目は20歳以上の男性被験者25名とし,予定通り全ての項目の測定を実施することができた.当該研究の2年目(令和2年度)においても初年度と同様の測定を行い,被験者数を増加させる予定であった.しかしながら,本学の新型コロナ感染症対策の方針として学生の学内への立ち入り禁止,並びに測定者と被験者との間で接触を伴う超音波エコー,多周波インピーダンス測定を実施することが不可能となった.あわせて医療機関でのX線CT撮影も不可能となり,予定していた測定が完全に中止となった.第3年次には初年度と同様の測定を35名の被験者を対象に実施することができた.当初,予定していた人数の60名には達しているが令和4年度に1年間の期間延長を申請し,2年目に実施できなかった分の測定を実施する.最終年度である本年度はできる限り被験者数を確保し,統計解析に耐えうる人数での集計解析を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は申請期間の実質3年目(最終年度)にあたる.初年度,3年度と同様に血液データ(血糖,インスリン,中性脂肪(TG),総コレステロール(TC),HDLコレステロール(HDL-c),LDLコレス テロール(LDL-c))などの臨床検査,体重,BMI,腹囲,体脂肪率,筋肉量,腹囲などの形態計測及びX線CT画像からは腹部の内臓脂肪面積,皮下脂肪面積,大腰筋,傍脊柱筋,外側広筋のCT値の収集,体力は膝伸筋力とし,インピーダンス値(細胞内・外抵抗,位相角)とエコー強度の測定部位は大腿部の外側広筋の筋腹部である.あわせて日常の生活習慣に関するアンケートを実施する.ここ2年間で得られた60名のデータに加え令和4年度の最終年度には肥満者の人数を多く抽出し体格の相違により解析を試みる.被験者を運動群と非運動群に分け,比較検討を行うことを予定している.2年間に収集した成績では細胞外抵抗や位相角との関連性に顕著な関連性がみられた.引き続き,インピーダンスの諸変量が内臓脂肪面積,筋内脂肪さらにはインスリン抵抗性との関連性を明らかにし,多周波インピーダンスのどの周波数が筋内脂肪を反映するかを明らかにする予定である.そのための統計解析が可能となる被験者数の増加を目指すものである.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では,被験者は毎年20名程度,3年間で約60名を予定していた. 令和2年度(2年目)に新型コロナ感染予防のため被験者が学内立ち入り禁止及びX線CT検査を協力病院(白澤病院)で実施できなかった.令和4年度に1年間の延長を申請し,そこでの検査費として血液検査,X線CT検査,インピーダンス検査,エコー検査等での消耗品,及び研究の成果を発表するための経費として上記の予算を繰り越すこととした.既に令和元年度と令和3年度の2年間で予定の60名に達しているが,被験者の中で肥満者の占める割合が少なく,最終年度には,肥満者を増やし,体格のバリエーションを広げる予定である.被験者数の増加を図ることにより統計解析に耐えうるデータを築き上げたいと考えている.
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