研究課題/領域番号 |
19K11462
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
室伏 広治 東京医科歯科大学, スポーツサイエンス機構, 教授 (30609300)
|
研究分担者 |
山口 大輔 東京医科歯科大学, スポーツサイエンス機構, 特任助教 (30770713)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ハンマロビクスエクササイズ / 傷害予防 / 運動効率 / 弛緩と緊張 / タイミング |
研究実績の概要 |
アシックススポーツ工学研究所と東京医科歯科大学スポーツセンター内実験室において、ハンマロビクスエクササイズの上級者(ハンマーを一定時間安定して振り続けられる)、中級者(ハンマーを振ることができるが一定時間安定しない)、初級者(ハンマーを振ることができない)の各1名ずつがエクササイズを一定時間行う間の動力学的特性と筋活動に関する解析を行った。解析の結果上級者は運動中一定の姿勢を保持しながらも効率の良い運動を継続し(重心の上下動が少ない)、ハンマーの振りに対して常に一定のポイントでの下肢関節トルクの増加が見られた。また筋活動においても同様に、ハンマーの振りに対して一定のポイントでそれぞれの筋活動の増減が見られた。対して中級者は運動中の重心の動きの幅が大きく、ハンマーの振りに対して下肢関節トルクの増減するタイミングが周期ごとに違った。初級者においてはハンマーを振ること自体が困難であるにも関わらず,力が入りっぱなしの状態であった。以上の解析の結果、ハンマーを一定時間安定して振り続けられるハンマロビクスエクササイズ上級者は一定のタイミングで筋肉の弛緩と緊張を繰り返し、エクササイズスキルが低い者ほど筋群の弛緩と緊張の区別がなかった。スイングの安定性が運動効率の良さに影響している事が明らかとなり、一部の成果を学会演題、シンポジウム・セミナー等で公表し始めた。 思春期前後の男女やアスリートのジャンプ動作・ジャンプ着地において、運動スキルレベルが低い者や膝関節に受傷歴を持つ者ほど動作時の下肢筋群の共縮が高い事が様々な研究で報告されている。これは今回の解析でのハンマロビクスの習得レベルの高さと筋共縮時間の長さの関係と類似する。そのため我々は、ハンマロビクスエクササイズを行う事が筋の弛緩と緊張の効率を高め、ジャンプ動作時のパフォーマンス向上や下肢の傷害予防につながるのではないかと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験の前段階としてハンマロビクスエクササイズの運動中のハンマーの動きと身体の運動特徴を表面筋電と三次元動作解析システムを用いて分析する事を目標としていた。分析結果はアスリートの傷害予防に結びつく可能性のあるものでこちらの予測していた範囲内のため順調に進んでいる。今後は今回得たデータをベースにより多くのデータ収集を行い、傷害予防に向けたトレーニングプログラムの構築を目指す。
|
今後の研究の推進方策 |
研究分担者とエフォートをコントロールしつつ、データ収集を行う。研究計画では各被験者におけるハンマロビクスエクササイズ前後での定められた運動を行った際の効果を比較検証する予定であったが、今回得たデータより健常アスリートを対象としてハンマロビクスエクササイズを行ってもらい、それぞれのエクササイズ習得レベルに振り分けた際の筋活動の違いとアスリートとしてのパフォーマンスレベル、また下肢の傷害歴との関係性について検証する事とした。またデータ処理補助スタッフの雇用も検討しながら、得られた研究成果は適時、学会演題、論文、シンポジウム・セミナー、ホームページなどで公表していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた計測機器は現時点でアシックススポーツ工学研究所に用意されている機器で十分との判断により次年度以降に購入を検討する事となった。結果表面筋電の使用の際に必要となるブルーセンサーをはじめとした消耗品の購入が主となった。旅費では3月に予定していたモナコでのIOC World Conference on Prevention of Injury & Illness in Sportでの講演予定がCOVID-19の影響を受けてキャンセルとなった。以上の理由のため次年度使用額が生じた。
|