研究課題/領域番号 |
19K11471
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研究機関 | 了徳寺大学 |
研究代表者 |
越田 専太郎 了徳寺大学, 健康科学部, 教授 (60532637)
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研究分担者 |
石井 孝法 了徳寺大学, 健康科学部, 准教授 (60735041)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 慣性センサ / 3次元動作解析 |
研究実績の概要 |
柔道における重症頭部外傷の多くは、大外刈などで後方に投げられた場面で、頭部へ衝撃が加わったことで生じた急性硬膜下血腫である。つまり、柔道頭部外傷予防を考える際には、投げられた場面での頭部衝撃に着目する必要性を示している。 我々のバイオメカニクス研究も先行研究を支持する結果が得られているものの、これらはいずれも実験室で得られた情報である。そのため、測定条件は実際の柔道場面と大きく異なっている。頭部外傷の多くは試合に近い形式の練習で生じていることから、結果の解釈には注意が必要となる。 スポーツ動作時に選手の頭部に加わる衝撃に関しては、慣性センサを用いた報告が多くなされている。柔道動作における報告も散見するが、分析に関する詳細な記載がない場合も多い。また、本研究では実際の練習や試合での汎用性を考慮してマウスガード型の慣性センサを使用するが、その測定妥当性について十分に検証されていない。そこで本年度は光学式の3次元動作解析で得られたデータとの比較により、マウスガード型慣性センサを用いた柔道動作時の頭部衝撃データの妥当性について検証することを目的に研究を進めた。また、3次元動作解析による新たなカメラ設定による測定精度についても、検証をした。 慣性センサは当初の計画から変更し、マウスガード型を用いる。作成には、光学印象を用いた対象個々の口腔データを取得するために、医療機関の協力を得る。現在までに、測定手法の変更に伴う生命倫理審査の変更承認も含め、マウスガード型慣性センサの作成体制は整っている。柔道競技における慣性センサを用いた頭部衝撃測定の確立は、練習時の頭部外傷発生の早期発見や見逃しの防止、頭部外傷予防プログラムの効果判定システムの構築につながる可能性もある。さらに、将来の頭部外傷リスクのスクリーニングテスト開発へのデータ利用も検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在までに本研究課題の進捗状況は、下記の理由により遅延している。 当初計画において、使用予定であったパッチ型慣性センサの製造販売元(X2biosystems)の倒産が判明した。そのため、パッチ型慣性センサを必要数調達することが困難な状況となり、急遽測定機器の変更が必要であった。慣性センサによる柔道の研究では、多くの場合慣性センサをヘッドギア内に内蔵させる、もしくは頭部に貼付する形で用いている場合が多い。しかし、このようなセンサの貼付は、実際の練習時また試合時の情報を取得する方法には適さず、本研究において選択することは難しい。そこで、現在は、マウス型慣性センサの使用を予定している。マウス型慣性センサはこれまでもラグビーフットボールでの頭部衝撃を測定する目的で用いられてきており、コンタクトスポーツでの使用実績がある。この測定方法変更に伴う諸手続きにより、本研究計画が遅延した。 また、2019年度終盤のCOVID-19 の感染拡大による学校施設使用の制限により、実施予定であった測定を実施できない状況が継続している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、昨年度の実施が計画されていた、マウスガード内蔵型慣性センサによる柔道動作時の頭部加速度、角速度、角加速度データの妥当性について検証する。また、大学生を対象として、柔道競技時の頭部衝撃データの測定を計画している。具体的には、公益財団法人全日本柔道連盟の指針に従い、大学柔道選手の練習が開始される以降の時期に、以下の条件を設定して頭部外傷衝撃データを測定する。測定条件は、1.模擬形式で実施する自由練習 2. 模擬形式で実施する試合、とする。2022年度は、COVID-19の感染拡大状況を考慮しながら、実際の練習におけるデータ取得を計画している。現状は、12週間を目処に測定し分析することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスガード型慣性センサの購入を計画している。パッチ型慣性センサを取り扱うことが不可となったこと、新型コロナウイルス感染拡大による実験計画の遅延の影響により、購入計画も遅延が生じている。2020年度は年度後半から購入をすすめていく
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