本研究は、運動物体に対する認知・予測・運動制御局面の特性について各局面のパフォーマンスを評価し、各局面の特性がどのように捕捉パフォーマンスに関係するのか検討することが目的である。 モニター上における仮想環境実験において、運動物体(ボール)が10deg/sで等速移動し、板前面を移動する間に板を変色させ、その時のボール位置を板の目盛りで回答する位置認知(可視条件)課題、ボールが板後方を移動する間に板を変色させ、その時の位置を板の目盛りで回答する位置予測(遮蔽条件)課題を実施した。回答位置から認知速度および予測速度を求め分析した。 2022年度は、一般学生を対象に運動物体の移動方向をこれまで実施してきた左から右方向(水平条件)に加えて、上から下方向(垂直条件)、左斜め上から右斜め下方向(斜条件)で遮蔽条件課題を実施した。またバドミントン競技者と非球技競技者における水平条件と垂直条件における可視条件課題と遮蔽条件課題を実施し競技特性による認知予測特性について検討した。 一般学生における遮蔽条件課題における予測速度は、水平条件5.83 deg/s、斜条件5.11deg/s、垂直条件4.97deg/sであった。バドミントン競技者と非球技競技者における可視条件の認知速度は、水平条件が9.4deg/sと8.9deg/s、垂直条件が9.6deg/sと9.2deg/sであった。遮蔽条件での予測速度は、水平条件が6.1deg/sと5.0deg/s、垂直条件が6.1deg/sと4.6deg/sであった。 遮蔽後の予測速度は、同じ速度(10deg/s)の運動物体であるにも関わらず水平条件よりも垂直条件の方が遅く予測されることがわかった。バドミントン競技者は、非球技競技者よりも水平・垂直条件のような運動方向や可視・遮蔽条件などの見えている物体や途中から消失した物体に対して、認知・予測精度が高いという競技特性が認められた。
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