研究課題/領域番号 |
19K11473
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
武田 剛 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (20508840)
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研究分担者 |
酒井 紳 筑波大学, 体育系, 特任助教 (90813840)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クロール / 浮き上がり / 初速度 / 泳ぎ出し / 動作分析 |
研究実績の概要 |
2020年度については後ろ倒しになっていた2019年度計画で実施予定の実験を実施した。順天堂大学さくらキャンパス屋内プールにおいて、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症予防対策を徹底した上で実験を実施した。大学女子競泳選手10名が参加した。競泳用の牽引装置(Torrent E-Rack Swim Power Trainer)を用いて対象者を高速度域(泳者が自身の泳法動作のみで発揮できる速度よりも高い速度)まで牽引し、その後、牽引状態を解除し最大努力でクロールを泳いでもらった。その後の泳速度の変化をデジタルビデオカメラで撮影した映像から画像分析によって算出し、分析を行った。 この実験により、対象者自身の泳動作によって達成できる速度以上で泳ぐことで、クロールでは速度が高い状態(高速度状態)を約5m程度持続させる事が可能であることが確認できた。またこの速度の増加とともにストローク頻度(ピッチ)の増加傾向も確認した。このことは競泳競技に置き換えると、スタート台やプール壁を蹴り出すことよって得られる高い初期速度は水中でのキック局面を経て水面での泳法動作の初期においてもその効果が持続すると解釈できる。今後研究期間でさらにこの解釈を補強するデータを収集し、成果の発表につなげる予定である。また、高速状態の持続にはストローク頻度が大きく関与していることが新たに示唆されたため、今後の実験計画にこの検証を含めて研究を実施していく予定である。この成果の一部を第32回日本コーチング学会web開催で発表し、水泳競技を専門とする研究者から意見や質問を受けて、研究成果に関する議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は実験に使用する競泳の牽引装置の不具合によって実験開始が遅れてしまった。この牽引装置(Torrent E-Rack Swim Power Trainer)は日本代理店を通じて購入(輸入)した海外製品のため、不具合の修繕に米国まで輸送する必要があったため、修繕に長く時間を費やしてしまった。2020年度については、新型コロナウイルス感染症が日本国内で流行し、研究を行う順天堂大学の施設への立ち入りが制限されたり、体育施設の使用禁止期間が設けられたことが大きく影響し、実験が開始できる時期が9月移行となってしまった。その後、研究活動の際に感染症対策を徹底することで開始し、女子競泳選手から10名のデータを収集することが出来、一部成果の発表することできた。2021年度の序盤の計画の遅れは終盤において挽回することができた。しかしながら、2019年度計画の遅れを挽回するには至っておらず、2020年度の進捗自体は「やや遅れている」という評価である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度についても引き続き新型コロナウイルス感染症対策が必要となるので、計画当初の進捗まで復帰することの見通しは厳しい状況である。しかし、感染症対策を徹底することでの実験を実施したの実績があるので、可能な限りデータ収集を行い、成果公表に努めていきたい。また、高速度状態持続の実証には計画段階では想定していなかった、追加の検証が必要であることが明らかとなったので、筑波大学体育系(水泳研究室)の高木英樹教授や角川隆明助教に研究協力を得ながら、実証に必要なデータを収集していく予定である。加えて、2020年度の成果公表した実験データについても、再実験が必要であるとも判断しているので、この再実験(高速度状態の確認)も実施予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予備実験を重ねていく上で、計画していたモーションセンサ等による泳速度の即時評価が精度の点で実現が困難であることが判明し、支出が少なくなった。また、流水プール等の抵抗測定に実験についても現時点の計測技術や理論で詳細な評価が現実的に困難であると判断した。これにより実験の計測方法の見直しと若干の計画変更を行い、購入等を予定した備品等を購入する必要がなくなったことも支出が少なくなった理由である。また計測できる指標が削減されたことため、多くの被験者の多くの試行からのデータを収集するという方針に切り替えたことで、物品費よりも実験費の支出が多くなった。さらに新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大によって実験実施が計画通り実施できなかったことも、差額が生じた理由の一つである。今後は引き続き実験を継続し多くのデータ収集するために、消耗品や人件費を支出する予定である。
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