コロナ禍の影響により、最終年度の実験とデータ分析が遅延しましたが、筑波大学体育系の流水プールで行った実験において、競泳クロールの泳法中に安定速度よりも高い流速(高速度状態)を再現した。この実験では、回流水槽内でストリームライン姿勢(保持姿勢)による受動抵抗、水中ドルフィンキックによる抵抗、水面上のクロール泳法における正味の抵抗(総抵抗から推進力を差し引いた泳者の最終的な移動速度に影響する抵抗)を計測した。 当初の研究計画では競泳選手へのトレーニング介入を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大と学内業務の調整により、実験計画が遅れ、介入実験を実施することができませんでした。しかし、回流水槽を使用してストリームライン姿勢、水中ドルフィンキック、水面上のクロール泳法における高速度状態での正味の抵抗を計測し、得られた知見から、当初の研究目的の大部分を達成できたと判断した。そのため、2023年度をもって本研究課題を終了することとした。 2023年度までには、2つの実験を実施し、水面上の泳法動作による高速度状態の持続性を確認した。また、水面上の安定速度を超える速度域における泳者の抵抗に関する原則について、速度と抵抗の関係から、競泳レースのスタート台からの入水後には、ストリームライン姿勢、水中ドルフィンキック、水面上の泳法動作の順序が重要であり、泳法動作を安定速度よりも速い速度で開始することで、さらなるパフォーマンス向上の可能性があることを本研究で示すことに成功した。
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