研究課題/領域番号 |
19K11481
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研究機関 | 東海学園大学 |
研究代表者 |
木村 華織 東海学園大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (50634581)
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研究分担者 |
來田 享子 中京大学, スポーツ科学部, 教授 (40350946)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 女性アスリート / ロールモデル / ライフヒストリー / ジェンダー / 良妻賢母 |
研究実績の概要 |
本研究では「スポーツはジェンダー規範を乗り越えるツールになり得たか」という問題意識のもと、より広範に女性アスリートの人物史の中でスポーツが果たした役割を明らかにすることを目的にした。1年目となる令和1年度は、戦前の女性アスリートに関する基礎的情報を体系的にまとめるため、研究計画に示した課題1から課題6のうち、課題1:大正期から昭和戦前期に活躍した女性アスリートの基礎的情報の収集・整理、を中心に進めた。令和1年度の成果は以下の通りである。 戦前の女性アスリートの基礎的情報については、1932年ロサンゼルス大会、1936年ベルリン大会の乗船名簿や大会報告書、その他の収集史料から、当時の出身校(所属先)、居住地、競技歴、競技成績等の基礎的情報の収集を概ね終えることができた。これに関連する成果として、1)従来から史料収集を続けてきた水泳の前畑秀子氏のアルバムおよび関連史料が新たに複数発掘されたこと、2)これまで一次史料が見つかっていなかった水泳の小島一枝氏の史料が発掘されたこと、があげられる。小島史料については、選手時代のアルバムやメダル、選手引退後の水泳審判章や暮らしをうかがわせるアルバムなど、ライフヒストリーを描き出すことを可能にする史料も複数みられた。陸上競技については、中京大学スポーツミュージアムに所蔵されている渡辺すみ子史料を中心に検討を進める中で、1932年ロサンゼルス大会代表の土倉麻氏のご遺族にコンタクトを取ることができた。オリンピック選手以外の史料収集が難しい状況にあるが、継続的に史料収集を続け、戦前の女性アスリートの情報をアップデートしていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究課題1では、課題1-1:戦前の女性オリンピック選手28名の基礎的情報の収集・整理、課題1-2:オリンピック選手以外で対象となり得る選手の基礎的情報の収集・整理、課題1-3:戦前の女性アスリートの名鑑作成、以上の3つを課題にあげていた。課題1-1については、概ね情報収集とデータの整理が終えられていが、課題1-3の名鑑作成までには至っていない。しかし、これについては、研究期間中、常に情報をアップデートしていく必要性があることから、データ上の整理に留め、本研究の最終的な成果物のひとつとして、研究終了時に名鑑としてまとめたいと考える。課題1-2については一部の選手の情報に留まっているのが現状であり、史料収集の困難さもあることから、研究分担者と協議のうえ、オリンピック選手に絞って検討していくことも視野に入れている。一部、計画を変更した点や再考している点もあるが、令和1年度は情報収集、史料収集を研究課題の中心に据えていた点から、現時点では概ね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の2年間(2年目、3年目)は、次の3点について検討を行う。課題2:本研究が対象とする時期の「良妻賢母像」と女性の生き方イメージの検証、課題3:新聞・雑誌に見る女性アスリートの描かれ方の検証、課題4:女性アスリートのライフヒストリーの検証、である。研究の進め方として、2年目は課題2の検討を中心にしながら、進捗状況に応じて課題3・4にも着手することになる。特に課題4では、聞き取り調査が予定されていることから、インタビューイの予定や年齢を勘案しながら、適宜実施していく予定である。この2年間においては、状況に応じて研究の順序を前後させながら課題2から4を遂行する。 具体的な検討事項として、課題2では、良妻賢母像の変化の過程について、従来の女性史やジェンダー領域の研究成果に当時の女性向け雑誌等の分析を加えることで再検討する。課題3では、世論が女性アスリートに何を求め、どのようにモデル化していったのかを検証するために、女性アスリートを報じた新聞記事や体育・スポーツ雑誌を検討する。課題4では、自伝、手記、学校史の検討や聞き取り調査を行う中で、その時代に生きた女性アスリートの姿を描き出す。 今後2年間で上記の研究課題を進め、戦前の日本において女性アスリートがどのようなイメージでとらえられ、一般女性の中にモデル化されていったのか/モデル化されなかったのかについて、当時の状況を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和1年度の計画では、本研究課題用のPC(iMac)を購入する予定だったが、当初計画にはなかった出費(故障したプリンタの購入代、発掘史料を保存するための加工・額代)が生じたため、PC購入に必要な予算が一部不足することとなった。そのため、PC購入代として準備していた金額から上記の出費を差し引いた金額を次年度に繰り越し、次年度予算の一部をPC購入代にあてることとした。また、PCのモデルチェンジ、アップグレードによる価格変動もあり、計画当初の金額よりもPC価格自体が高騰していることも影響した。令和2年度の予算執行が可能になると同時に、早急にPCを購入する予定である。
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