研究課題/領域番号 |
19K11486
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
本多 賢彦 近畿大学, 医学部, 助教 (10455545)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 遅筋 / ノックアウトマウス / トランスジェニックマウス / 好気的代謝 / 生活習慣病 |
研究実績の概要 |
本研究は2型糖尿病を含む生活習慣病の新規治療法の分子基盤構築を目的とする。骨格筋は、ヒト体内における最大のエネルギー消費器官である。運動による骨格筋の好気的代謝能力の賦活化は、生活習慣病の予防および治療に有効であると考えられているが、分子的な制御メカニズムについては不明な点が多い。本研究では、遅筋と速筋の混在比率が、骨格筋の好気的代謝能力と深く結びついて制御されていることに着目し、遅筋化制御因子であるVgll2を欠損するマウスないし、筋特異的に過剰発現するマウスを用いて、Vgll2の発現量と肥満への耐性との相関について解析を行うとともに、Vgll2を介した筋代謝調節の解明を行う。Vgll2欠損マウスについては、繁殖の結果、野生型産仔とホモ産仔を得ることができたため、それぞれに高脂肪食負荷を行った(各ジェノタイプにつき通常食群と高脂肪食群の2群で計4群。各群5匹。)。12週間、高脂肪食を与え体重の測定を行ったところ、野生型とホモ産仔の間に有意な差は認められなかった。CT装置を用いた体脂肪率の比較も行ったが、皮下脂肪率、内臓脂肪率ともに有意な差は認められず、Vgll2欠損がマウスの肥満耐性に与える影響は小さいことが示唆された。さらに、昨年度実施途中であった筋特異的にVgll2を過剰発現するトランスジェニックマウスの作製を継続し、6匹のファウンダー(F0)マウスを得ることができた。現在、繁殖を進めており、一部の系統からF1を得られたので、適宜、骨格筋を摘出し、発現レベルの高い系統の選別を行うことを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Vgll2欠損マウスに対して高脂肪食負荷を行い、Vgll2欠損がマウスの肥満耐性に与える影響について示唆を得ることができた。トランスジェニックマウスについては、F0マウスを得ることに成功し、その後、繁殖を進めるなか、一部の系統についてはF1マウスも得ることができている。また、培養細胞を用いた研究推進法の確立にも着手している。 以上の理由から判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Vgll2欠損マウスについては繁殖を進め、高脂肪食負荷の例数を増やすこととする。トランスジェニックマウスについても繁殖を進め、現時点で得られている6系統のマウスから、表現型解析に用いる系統の選別をできるだけ速やかに行い、高脂肪食負荷等、表現型解析に進む。 以上の状況を踏まえて、さらに研究を推進するために、野生型マウスから筋芽細胞を採取し、それを分化誘導して筋管細胞を得る系を立ち上げた。加えて、この細胞にカルシウムイオノフォアの作用させることで、Vgll2の発現量が増加することも確認している。今後は、Vgll2欠損マウス由来の筋芽細胞についても同様の環境で培養を行い、筋管細胞が得られるか検討を行う。その後、トランスクリプトーム解析による野生型-欠損マウス間の遺伝子発現比較を行って、Vgll2の発現量の違いが筋代謝調節関連遺伝子の発現に与える影響について示唆を得る。この解析で得られた結果について、トランスジェニックマウスを用いて検証を加えることも計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬や機器の選定を慎重に行った結果、予算の縮小に成功した。次年度使用額は、マウスの繁殖のための、動物購入費用に充てる。
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