研究課題/領域番号 |
19K11490
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
竹之内 隆志 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (50252284)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スポーツ選手 / 心の強さの発達 / 発達課題の達成 / 自己投入 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,スポーツ選手が試合で実力を発揮したり,プレッシャーに対処したりするために必要な心の強さを高める経験や心の強さの発達メカニズムを明らかにすることである. 前年度においては,大学選手のデータに基づいて,日常生活や競技生活での自己投入(努力すること)の経験が勤勉性(小学期・中学期頃の発達課題)や同一性(高校期・大学期頃の発達課題)の達成に関連し,さらにこれらの発達課題の達成がスポーツ選手の心の強さに関連することを明らかにした. このような前年度の研究活動に続いて,本年度は主に以下の2つの研究活動を行った.一つは,大学選手の分析結果を論文としてまとめた.もう一つは,以前に収集していた高校選手のデータを用いて,発達差の検討を行った.その理由は,大学選手の結果より「自己投入の経験 → 発達課題の達成 → 心の強さの発達」といった関連(心の強さの発達メカニズム)が示唆されたが,発達期によって重要な発達課題は異なるので,この関連の内容は発達期によって異なると考えられたためである.分析の結果,高校選手でも上記の関連は示された.しかし,予想通りに関連の内容は発達期で異なる部分がみられ,大学男子選手では,将来の職業での自己投入の経験が同一性の達成に関連し,同一性の達成が心の強さに関連していたが,高校男子選手ではそのような関連はみられなかった.このように心の強さの発達メカニズとしては,「自己投入の経験 → 発達課題の達成 → 心の強さの発達」という関連が考えられるが,この関連の内容は発達期で異なっており,スポーツ選手の心の強さを高めていくためには発達期に応じた自己投入の経験や発達課題の達成を支援することが必要と考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度の分析結果において,女子選手では発達課題の達成と心の強さとの関連が男子選手ほど明確ではなかった.そこで本年度は,両者の関連を媒介する要因を想定した検討や,新たな発達課題を取り上げた検討も行う予定であった.しかし,新型コロナウイルス感染症の影響で,本研究へのエフォートが低下したり,対面での調査が困難であったりしたため,これらの検討を行うためのデータを収集できなかった.そのため,研究期間を1年延長することにした.
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今後の研究の推進方策 |
発達課題の達成と心の強さとの関連を媒介する要因を検討する.また,新たな発達課題を取り上げて心の強さとの関連を検討する.これらの検討に必要なデータを収集するための質問紙は作成済みであり,スポーツ選手に質問紙調査を実施しデータを分析することで,スポーツ選手の心の強さの発達メカニズムをより明確にしていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症のため対面による学会が実施されず,旅費の未使用額が生じた.また,調査が実施できなかったため,人件費・謝金の未使用額が生じた.これらについては,次年度の学会参加時の旅費や調査実施時の人件費・謝金として使用する予定である.
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