本研究では東京学生柔道連盟に登録している大学生柔道競技者を対象に頭部ブラシ検査によるトンスランス感染症の罹患状況の調査および大学柔道選手を対象とした質問紙調査による大学競技現場と高校競技現場でのトンスランス感染症に関する意識の違いを検討することを目的とした. 東京学生柔道連盟に加盟している大学の学生を対象に頭部ブラシ検査の実施とGoogle formにてアンケート調査を行った.頭部ブラシ検査においては780名中42名が陽性であった(5.4%).また,男子は39名(6.3%)と罹患率が高かった.陽性者42名のうち1年生が23名(55%)であり,1年生の罹患率が高かった.コロナ禍での調査であり,陽性率は若干低かったが,傾向はコロナ前の状況と変わらず,高校時代の罹患率が高いことが明らかになった.また,トンスランス感染症の治療方法の理解については,大学時が有意に高く(p<0.01),発症率が高い高校時代の対応については理解が低いことが示唆された.発症後の治療対応についても大学時が有意に高い値を示し(p<0.00005),高校ではトンスランス感染症を発症しても治療をしない,あるいは治療実施が遅れることが多く,感染拡大に繋がっていることが予想された.トンスランス感染症を発症した際に指導者から明確な対応の指示がなされていないことも推察された.練習復帰の判断対応においても大学時が有意に高い値を示した(p<0.005),医療機関による完治診断後に練習復帰をしている者が少ないことが示唆され,指導者が正しい知識をもち,生徒への指導に当たることが重要であるといえる.
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