研究課題/領域番号 |
19K11501
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
好士 亮介 日本大学, 歯学部, 専修研究員 (80453877)
|
研究分担者 |
月村 直樹 日本大学, 歯学部, 准教授 (10301558)
菅野 直之 日本大学, 歯学部, 准教授 (30246904)
紙本 篤 日本大学, 歯学部, 准教授 (30386114)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | スポーツ選手 / 口腔清掃状態 |
研究実績の概要 |
スポーツ歯科分野では従来よりスポーツ選手の口腔内状況とパフォーマンスについて研究を行っている。その内容はマウスガードによる外傷予防や咬合接触と重心動揺との関連についてが多い。一方でスポーツ選手はう蝕罹患率が高いと報告されているが、選手や指導者の意識が低いのが現状である。 我々はスポーツアスリートの口腔衛生状態に着目し、実態調査および介入研究を計画した。バレーボール部に所属する学生29名を対象とし、口腔清掃習慣および習慣的飲料についてアンケート調査を行った。手用歯ブラシ使用群と電動歯ブラシ使用群の2群に分け、ブラッシング指導前後の歯周組織検査、口腔衛生状態の検査(プラーク付着状態)、唾液検査を行った。両群とも歯周組織の炎症やプラーク付着状態は改善した。手用歯ブラシ使用群と比較して電動歯ブラシ使用群ではう蝕や歯周病リスクがより低下していた。この内容については日本臨床スポーツ医学会学術大会(2019年11月16・17日、パシフィコ横浜)にて発表を行った。第30回日本スポーツ歯科医学会学術大会(2019年6月22日・23日、鹿児島)ではメインテーマが「女性とスポーツ・スポーツ歯科」であったので、発表とともに本研究に関連する内容の情報収集を併せて行った。女性アスリート特有の健康管理の問題点である三主徴(Low energy availability、運動性無月経、骨粗鬆症)や貧血、男女の体格差による外傷の違い、月経随伴症状等が周知されつつあるが、パフォーマンスに関する体調管理法等については確立してない現状が把握出来た。 月経周期は口腔内では口臭や歯周組織の炎症に影響を与えることが報告されている。口腔清掃状態は上気道感染のリスクの増加やインフルエンザ感染のリスクに関連することから、口腔内状況と月経周期、体調管理等の関連を検討することは重要と思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定として、以前より研究協力関係にある日本大学保健体育審議会所属の女子バレー部部員でマウスガード装着未経験者を対象とし、研究を行う予定であった。すでに口腔清掃指導等の介入研究を実施していたため、先行研究終了後、一定期間を空けて実施することとした。また、被験者の負担を軽減するために歯科健診と期間を調整していた。その間に被験者団体との研究協力の交渉、使用器材(健康モニタリング装置「ASTRIM FIT」、唾液中ストレスマーカー分析装置「CUBE Reader コルチゾール・sIgA測定キット」、婦人用体温計(MC-6830L)、試薬等の消耗品(前述の器材の試薬、咬合接触検査装置T-スキャン)の購入を行った。使用器材の使用方法の確認等を実施し、プロトコールおよび実施時期についての検討を行っていた。 先行研究が終了したので、具体的に実施開始を予定していたが、新型コロナウイルス感染の影響により歯科健診や学生生活自体が延期しており、唾液検体や移動による感染リスク等を考慮し、実施方法や時期を再検討しているため、研究遂行が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定では疲労度を検討するために血中の乳酸値を用いる予定であったが、侵襲があるため取りやめた。内容については、月経周期状態は婦人体温計にて体温測定し、基礎体温表を作成することで把握すること、習慣的飲料や間食・補食の種類、口腔内の自覚症状を含めた口腔衛生習慣、上気道感染症をアンケート調査にて把握することを当初と同様に予定している。口腔内状況の検査として歯周組織検査、唾液検査(sIgA量およびコルチゾール量の測定、う蝕・歯周病リスク判定)、咬合接触状態検査を、コンディションについては体組成測定、ヘモグロビン推定値測定を、パフォーマンスについてはジャンプ最高到達点、静的重心動揺にて把握予定である。課題としては、現在新型コロナウイルス感染の影響で人との接触機会や移動に制限があり、当初予定していた被験者との研究遂行が困難となる可能性がある。また、口腔内検査、体組成検査、ジャンプ最高到達点および静的重心動揺については実施場所が限定されている。現時点で、影響の収束および状況の変動については予想が困難である。これらについての対応策として、被験者群の変更・追加し、それに沿って実施可能な内容のみの遂行といった実験内容の検討、遠隔での遂行が可能な内容のみの実施等を検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成31年度は直接経費として1,900,000円申請したが、実際の支出状況として1,099,373円を使用し、800,627円が次年度への繰越額となった。次年度使用が生じた理由としては、当初購入予定であった、高精度体成分分析装置「ITO-InBody 370」および自立式ジャンプ高計測スケール「ヤードスティック」が研究実施予定施設のスポーツ日大アスレティックセンター八幡山に導入されたため、購入しなかった。唾液中sIgA量およびコルチゾール量の測定についてはELISA法を予定していたが、より安価で迅速に計測が出来る唾液中ストレスマーカー分析装置「CUBE Reader」および付属のコルチゾール・sIgA測定キットに変更した。また、疲労度を検討するため、簡易血中乳酸測定器「ラクテート・プロ2 LT-1730」を用いる予定であったが、侵襲があることや乳酸値が疲労度の指標として変化してきていることから用いなかった。これらの使用予定であった物品を購入しなかっため、残金が生じた。さらに予定した学会への発表を行ったが、一部の経費を別で対応したため、残金が生じた。 次年度への繰越金は、平成31年度の助成金と合わせて、主に各測定機器の試薬やセンサーシート等の消耗品購入に使用する予定である。
|