研究課題/領域番号 |
19K11515
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
明石 卓也 岩手大学, 理工学部, 准教授 (50403655)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スポーツ科学 / ビッグデータ / 真か計算 / 深層学習 / コンピュータビジョン |
研究実績の概要 |
本申請では,人工知能のひとつである深層学習において,行動を認知するための人間の脳の仕組みを実現することを目的とする.また,ニューロサイエンス・行動科学分野への大量データ自動解析のツールを提供すると共に,脳の機能の理解に貢献し,機械学習・画像認識の性能飛躍的向上の,一石二鳥以上を狙う. 人間の脳では,対象物体の動き方の情報を利用して行動を認知している.つまり,空間的特徴量だけではなく,時間的な変化の仕方(時間的特徴量)を学習していると考えられる. そのため,遺伝的アルゴリズムのような進化的手法と敵対学習の組み合わせや,空間的特徴量と時間的特徴量の融合に取り組み,ニューロサイエンス分野の研究協力者と議論し,新たな深層学習のスキームを提案する. 初年度は主としてデータ収集に関するデータの種類や収集方法の検討および収集作業に取り組んだ.具体的には4月から9月まで収集可能なデータの検討を実施し,並行して7月から順次データの収集に取り掛かった.収集するデータとしては,申請者ら従来から提案している,進化的動画像処理による非接触・非侵襲的なセンシング技術を用いて,頭部,眼球,指,身体などの人の動作を収集している.また,音声や脳波といった画像以外のデータも収集対象の候補である.さらに,時間的特徴量を決定し,融合方法について,空間的特徴量と時間的特徴量を別々のNWで学習した後に組み合わせるのか,学習途中に組み合わせるのか,といった融合の方法について検討した.その成果の一部をジャーナル論文として発表することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では,指や膝の微細周期運動のデータ収集の取得方法について検討した.指の微細周期運動については,岩手大学で制作した既存のハードウェアの改良に取り組み,共同研究者であるカリフォルニア工科大学や玉川大学と密に連携をとりながら,実際にデータ収集を実施した.また,膝の微細周期運動の収集については,カメラの選定を実施した.特に,指については2件の学会発表を実施している. さらに,空間的特徴量と時間的特徴量を同時に有効利用するアルゴリズムを検討するために,まず第1段階としてオーディオデータと画像データという異なるデータを学習するマルチモーダル学習フレームワークを構築した.具体的な事例としては,鳥の鳴き声と鳥の画像を用いて鳥の種類をクラス分けするというfine-grained categorization問題に取り組んだ.この成果は国際雑誌へ投稿し,採録されている.並行して,敵対学習のアルゴリズムと遺伝的アルゴリズムの融合方法について検討を重ねている. 以上の理由から,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2年目以降は1年目に取得したデータを利用しつつ,空間的特徴量と時間的特徴量を利用するアルゴリズムを検討し,遺伝的アルゴリズム等と敵対学習の組み合わせの方法を検討し,アルゴリズムの検証および洗練化に取り組む.具体的には,初年度の後半から空間的特徴量と時間的特徴量の融合に関する研究に着手し,並行して遺伝的アルゴリズム等と敵対学習の組み合わせのアルゴリズムの検討に入る.遺伝的アルゴリズムなどの進化的手法は,組み合わせ問題における最適化能力は比較的高いが,精度と処理速度の間にはトレードオフがある.それゆえ,高速な動画像処理や多次元の問題には処理時間がかかりすぎ,対応できないとされてきた.申請者は以前から多次元の最適化問題の解法に関する研究に取り組んでいる.本申請で扱う深層学習における最適化は,まさに多次元の問題である.そこで,これらの研究を深層学習の最適化に適用し,『GAと敵対学習を組み合わせ,空間的特徴量と時間的特徴量から構成されるビッグデータを有効利用し,従来にはないフレームワーク』の実現を図る.その間,必要であれば,再度,初年度に取り組んだデータの取得方法などを再検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定があった出張が延期になり,論文の投稿スケジュールも変更することになった.また,購入予定のハードウェアについて次年度購入することとしたため,次年度使用額が生じた.これらの計画変更について本申請の進捗に影響はほとんどない. 次年度では,新たな出張や必要な物品や前年度で購入しなかった消耗品の購入や,投稿中のジャーナル論文の投稿費用に使用する予定である.また,以下の使用を計画している.調査研究旅費として,関東もしくは西日本方面における調査・研究を兼ねた成果発表(3日間×4,40万円),欧米もしくはアジア地域における国際会議での調査・研究を兼ねた成果発表(5日間×1回,30万円)を予定している.また,大容量ハードディスク(1台,9万円)などの購入を予定している.研究補助の人件費として大学院生(1名以上)に対して研究協力謝金を支出する予定である.万一不足の場合は,他の研究費によって補填する予定である.
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