食事によって摂取した栄養素は、胃や小腸で消化・吸収され、体内の様々な臓器へと届けられる。したがって、食事による効果は、この消化・吸収系能力の影響を強く受けることになる。これまで、消化・吸収系機能が長期間の身体運動トレーニングによってどのような影響を受けるのかということに関しては、ほとんど明らかとなっていなかった。昨年度までの研究において、長期間の身体運動トレーニングにより膵臓における消化酵素および小腸における糖輸送体が増加することや、トレーニングを行いながら超高糖質食を摂取することで、膵臓の消化酵素の適応や胃排出速度がさらに高まることが明らかとなった。本年度の研究では、上記のような消化・吸収系機能と骨格筋の糖代謝(グリコーゲン代謝)との関係を検討した。超高糖質食を摂取しながらトレーニングを実施した実験動物では、膵臓の糖質消化酵素、小腸の糖輸送体ならびに胃排出速度がトレーニングのみを行った場合に比べて大きく増加するが、それらの発現量と運動後の骨格筋のグリコーゲン再合成率との間に高い相関関係が認められた。これまで、運動後の骨格筋のグリコーゲン貯蔵量や回復率を決める主な要因は、骨格筋の糖輸送体の発現量であると広く考えれてきたが、本研究結果から、トレーニングや食事による消化吸収系機能の適応も、骨格筋のグリコーゲン代謝に大きな影響を及ぼす要因であることが示唆された。
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