本研究は、酸化ストレスを抗酸化物質あるいは窒素負荷による低酸素刺激により制御し、機能的過負荷による筋肥大への影響を比較検討することである。本年度は、高齢マウスのmRNA分析を中心に行った。 実験動物には,18ヶ月齢雄性ICRマウスを用い,対照(Cont) 群、腱切除(FO)群、低酸素腱切除(LOFO)群およびアスタキサンチン腱切除(AxFO) 群の4群に分けた。Cont群を除く3群には両足の腓腹筋のおよそ1/3を切除し、足底筋 (PLA)とヒラメ筋(SOL)に機能的過負荷をかけた。LOFO群は腱切除後、15分間毎に低酸素 12.8%に6回曝露し,7日間継続した。AxFO群は腱切除1週間前より0.04% Ax食で飼育した。 速筋であるPLAの筋重量はCont群と比較して実験群で有意に高かったのに対し、遅筋であるSOLではAxFO群の筋重量のみが他の群よりも有意に高い値であった。IGF-1mRNA発現量はPLA、SOLともにCont群と比較して実験群で有意に高かった。Pax7、MyoD、Myogenin、MHCeのmRNA発現量がCont群よりも実験群で高い値を示す傾向はPLAで顕著であった。HGF mRNA発現量はSOLのAxFO群のみでCont群とFO群よりも高い値を示した。また、血管新生関連因子のうちPGC1αはPLA、SOLともにCont群と比較して実験群で有意な低値を示したのに対し、FGF2はSOLのAxFO群のみが、VEGF-AはPLAのLOFO群とAxFO群、SOLのAxFO群でCont群と比較して実験群で有意に低い値であった。これらの結果は、PLAでは酸化ストレスの動態にかかわらず代償性肥大が引き起こされるが、SOLでは酸化ストレス抑制時にのみに筋肥大がもたらされること、また筋力を高めるための機能要件のために血管新生が抑制される可能性があると考えられる。
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