本課題では、一般女性と女性アスリートを対象とし、性周期と運動トレーニングが及ぼす酸化ストレス応答への影響を評価し、スポーツ指導現場での応用の可能性について検証することを目的としている。女性ホルモンの中でもエストロゲンには抗酸化作用があるが、女性ホルモン濃度は月経周期によって変動するため、性周期は女性の酸化ストレス状態に影響する可能性がある。一方で適度な運動習慣は抗酸化力を高め酸化ストレスを軽減させるが、女性アスリートにおいては日常的な高強度トレーニングや月経不順などの健康障害によってこの作用に異常をきたし、高い酸化ストレスにさらされている可能性がある。 今年度は、これまでに実施してきた性周期ごとの安静時の酸化ストレスの知見を国際学会において発表した。さらに今年度は、運動部に所属し正常な月経周期を有する女子大学生を対象に、月経期と黄体期に運動負荷試験を実施し、運動に伴う酸化ストレスの変動を評価した。その結果、高強度運動に伴う酸化ストレス(d-ROMs)の変動は、黄体期より月経期のほうが高かったが、抗酸化力(BAP)は周期による違いは認められなかった。一方、ピーク酸素摂取量に周期による違いはなかった。これらの調査結果より、女性アスリートにおける運動時の酸化ストレスの変動は月経周期の影響を受け、黄体期よりも月経期において高いことを示した。本研究成果については、国内の雑誌論文に掲載が確定している。
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