研究課題/領域番号 |
19K11535
|
研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
越中 敬一 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 准教授 (30468037)
|
研究分担者 |
高橋 英幸 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ研究部, 主任研究員 (00292540)
塙 晴雄 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (40282983)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | グリコーゲン / へパトカイン / 温熱刺激 / ヒト / ラット |
研究実績の概要 |
本研究では、身体へ温熱・冷却刺激を負荷し、負荷直後およびその後のグリコーゲン超回復中において、ヒト筋グリコーゲンとヒト肝グリコーゲン代謝に与える影響を炭素磁気共鳴分光法(13C-MRS)によって検討する。さらに踏み込み、これら代謝調節を担う分子群としてヘパトカインの関与を仮定し、動物実験によってその作用機序の解明を試みる。明らかになったヒトグリコーゲンの動態や作用機序を基盤とし、組織温度の変化に起因したグリコーゲン濃度を調節する処方の確立やスポーツ現場における実践的応用法の確立を目指す。 ヒトでの研究に関して、グリコーゲン代謝に関する実験は以下の進捗状況に示す通り、コロナ禍の影響で予定通りに進行していない。しかしながら、グリコーゲン代謝以外の研究、すなわち、へパトカインへの影響を検討するための実験は行えている。全てのサンプルを回収後、ELISA法によってその濃度を測定予定である。 並行して、研究計画書の通年計画に予定される動物実験を進めている。ラットの下肢に温熱刺激を負荷することによってその熱を肝臓に拡散させると、肝臓でAMP-activated protein kinase (AMPK)が活性化する。AMPKはleukocyte cell-derived chemotoxin (LECT)2と呼ばれるへパトカインの産生・分泌の亢進に関与するが、温熱刺激を繰り返すことで肝臓のLECT2は減少する。肝臓からは多くのへパトカインが分泌されているため、他のへパトカインに与える影響も網羅的に検討をしているが、今のところ、LECT2以外の変化を確認できていない。特にselenoprotein Pと呼ばれる分子は、LECT2同様にトレーニング効果を減弱させる機能を有するとされているが、温熱刺激による影響は認められず、温熱刺激に応答するへパトカインは特異的である可能性が推察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、ヒトの筋・肝臓におけるグリコーゲン濃度の測定を国立スポーツ科学センターで行う予定であった。これらの測定は本研究における中核的な目的でありながら、昨今のコロナ禍に関連して、緊急事態宣言の前からセンターへの外部者の入館制限が始まり、現在に至っても施設の利用ができていない。また、緊急事態宣言が解除された新潟に所在する本学に至っても、大学教員や学生の県外への移動制限は継続中である。このような理由により、現在ヒトのグリコーゲンに関する実験の実施は厳しい状況に至っている。幸いコロナ禍は全国的に終息の方向に向かっていることが期待できるので、各種の状況が整い次第、実験を再開する予定である。 初年度においては、本学においてもヒトに対する加温処置が可能となるように入浴槽と加温機器を整備した。その設備を使用し、ヒトの研究に関してはグリコーゲン以外の測定は可能な状況になった。被験者がグリコーゲンの測定の際とは違う対象になる可能性が高いが、現在、本学において、温熱処置をした際の血液や呼気ガスのサンプルの回収を行っている。また、動物実験に関しては本学内で行えるので、こちらの方は順調に分析を進めている。コロナ禍が収まるまでの期間は、ヒトのグリコーゲン以外の測定と、動物実験を中心に進めていく予定である。 なお、ヒトのグリコーゲンに関する測定はすでに技術や条件を確認してあるので、コロナ禍が収まれば研究期間終了までに研究を完結できるものと予想する。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒトの研究に関して、本学において温熱刺激がヒトへパトカインに与える影響を検討するため、そのサンプリングを継続する。今年度中に10人程のサンプルを回収し、ELISAによる血中濃度の測定を終える予定である。一方、ヒトグリコーゲンに関しては、コロナ禍の終息状況に依存するが、実験を行える状況に至れば、国立スポーツ科学センターでの測定を開始したい。なお、今年度の開始が厳しいようであれば、研究期間の延長も含めて対応をする予定である。今年度中での再開を期待する。 動物実験に関して、温熱刺激による蛋白レベルでの細胞内変化を把握し、変動が認められたへパトカインの血中濃度をELISA法によって分析する。また、一過性の温熱刺激によって肝臓内のグリコーゲン量が低下することを確認しているので、繰り返し温熱刺激をした際におけるグリコーゲン濃度や、急性・反復刺激の際の、グリコーゲン代謝に関わる分子への影響を合わせて検討する予定である。また、当初の予定にはなかったが、一過性の熱刺激によって肝臓内の中性脂肪量も低下することを確認しているので、グリコーゲン代謝に加え、脂質代謝に与える影響も合わせて検討し、へパトカインの産生・分泌との関わりを明らかにする予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、ヒトの筋・肝臓におけるグリコーゲン濃度の測定を国立スポーツ科学センターで行う予定であった。しかしながら、昨今のコロナ禍に関連して、現在に至っても施設の利用ができていない。そのため、被験者の交通費、宿泊費、謝金等として計上していた予算の多くが当該年度において未使用になっている。しかしながら、本年度おいてコロナ禍が終息した場合には、未実施分の実験が予定通り行われる予定である。そのため、予算の繰り越しにはなるが、研究計画自体の大きな変更は無しとし、その予算も予定通りの目的において利用される。
|