研究課題/領域番号 |
19K11540
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
山添 光芳 武庫川女子大学, 健康・スポーツ科学部, 教授 (00284745)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨格筋細胞 / 分化運命 / 速筋 / 遅筋 / ゲノム編集 / 蛍光蛋白質 |
研究実績の概要 |
骨格筋繊維は、収縮力や収縮速度、易疲労性などの性質に基づき、速筋繊維と遅筋繊維に大きく分けることができる。ヒトの骨格筋では異なるタイプの筋繊維がモザイク状に分布しており、分布の比率には個人差があることがわかっている。また速筋は加齢とともに減少していると言われている。だがどのような刺激によって、筋肉前駆細胞が速筋、遅筋のどちらに分化していくのかを振分けられているのかはよくわかっていない。また一度どちらかのタイプの骨格筋繊維に最終分化したものが、なにかしらの必要があればもう一方のタイプにかわりうるのかということも詳細には明らかにされていない。これらのメカニズムが解明できれば、目的に即したトレーニング方法や、高齢者のサルコペニアを防ぐ一助になる可能性がある。 これらを明らかにするためには分化した細胞の性質を調べるだけで無く、途中経過を経時的に追跡していかなければならない。だが従来の免疫蛍光抗体法を使った観察ではこの目的を達成できない。そこでマーキングした細胞を生かしたまま経時的に観察するために、蛍光蛋白質を利用することにした。またゲノム編集技術を用いれば、異なる色の蛍光蛋白質遺伝子を目的とするタイプの筋繊維に該当するミオシン重鎖遺伝子座に挿入することができる。 このように遺伝子改変した筋芽細胞を樹立して、蛍光色の違いで筋繊維のタイプが決定できるシステムを構築する。 2020年度は昨年度に引き続き、3種類の筋繊維に特異的なミオシン重鎖の遺伝子座に、部位特異的に蛍光蛋白質遺伝子を挿入するためのノックインプラスミド構築に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
遅筋、速筋、その中間性質を持つ筋肉繊維の3種類の筋繊維について、それぞれの筋繊維が含むミオシン重鎖蛋白質の遺伝子に注目した。これらの遺伝子座に蛍光蛋白質遺伝子をノックインするために、ターゲッティングプラスミドの構築を行っている。それぞれの遺伝子の上流部分と下流部分をPCRで増幅したところ、いくつかの断片はマルチバンドになって同定に手間取った。これはミオシン重鎖蛋白質の遺伝子がファミリーを構成しているためだと思われる。塩基配列の解読により正しい断片の同定を試みたり、PCRのプライマーの再設計を行ったりして改善を図ろうとしているが、まだ解決していないものがある。 さらに今年度は一緒に実験を行っていた学部学生がコロナ禍で登学できない状態が多くなり、マンパワーの不足から実験が思い通りに捗らなかったという事情もあった。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子の上流と下流の断片がセットで得られたものについては、これらの断片を蛍光蛋白質遺伝子を持つプラスミドに挿入して、まずノックインプラスミドを完成させる。このプラスミドをCas9蛋白質、ガイドRNAとともにマウス筋芽細胞C2C12に導入し、この実験システムが予想通りに進むことを確認する。 正しいDNA断片がまだ得られていない遺伝子については、プライマーの再設計やPCR反応条件の検討などを行い、引き続きPCR実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
進捗状況で説明したように、本年度はゲノムPCRが予定通りに捗らなかったために次のステップであるゲノム編集まで到達できなかった。本来であればこれに要する試薬を購入予定であったが、2021年度の購入予定にまわした。その代わりに2020年度は、DNA断片をより安全に切り出すためにLEDライトを購入した。また細胞の維持で最も時間を取られる作業の一つである細胞数のカウントを機械化するために、セルカウンターと解析用のPCを購入した。 2021年度は、ゲノム編集用の試薬の購入と、マンパワーの不足を補うために実験補助員の人件費に予算を使用する予定である。
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