ゲノム編集を利用して蛍光蛋白質遺伝子をノックインするターゲットは、マウスミオシン重鎖遺伝子MYH7(遅筋タイプ)、MYH4(速筋タイプ)、MYH2(遅筋と速筋の中間タイプ)の3つであった。ターゲッティングベクターには各遺伝子の上流と下流断片が2kbずつ、これに蛍光蛋白質遺伝子、プラスミド骨格(pMD20)を入れると7kbを超える大きさになる。このため大腸菌の形質転換効率が低下し、コンストラクトの作成が困難であった。そこで遺伝子のflanking領域を2kbから1kbずつに短縮し、宿主大腸菌をdeoR変異を持つDH5αに替えて、まずMYH7ターゲッティングベクターの候補を得た。そこでマウス筋芽細胞C2C12にターゲッティングベクター、Cas9蛋白質、gRNAをエレクトロポレーション法により導入した。出現したコロニーのうち、10クローンをピックアップしてノックインの有無を調べたが、現時点でノックインされたものは認められていない。原因として①トランスフェクションの方法が悪かった・・・一般的にエレクトロポレーション法の方がリポフェクチン法より効率が高いといわれているので、こちらは考えにくい。 ②ターゲッティングベクターがゲノムに組み込まれる効率が低かった・・・薬剤耐性遺伝子をターゲッティングベクターに入れて、トランスフェクション後に薬剤選択をすると、効率のアップが期待できる。 ③gRNAの場所が良くなかった・・・「TrueDesign Genome Editor」を利用して他の配列を試してみる。以上の可能性を絞るために、トランスフェクション後の細胞をまとめて分化を促し、蛍光を発する細胞が出てくるかどうかを検証する。もしそのような細胞が認められた場合は、ゲノム編集が理論通りに行われている事を示しているので、効率を上げれば目的の細胞を得ることができると推測される。
|