スポーツを実施する際は,筋腱伸張性を向上させるストレッチングやウォームアップが外傷・障害予防のために重要である。ストレッチングは,関節可動域や筋腱伸張性を向上させる効果を有することから,スポーツ実施前後や健康増進などを目的として広く行われている。また,筋腱伸張性を向上させるためには,スタティックストレッチングがより有効であることはこれまでの研究によって示されている。しかしながら,寒冷環境における筋腱伸張性とスタティックストレッチングによる筋腱伸張性への効果に関しては,これまであまり見解が得られていない。そこで本研究では,常温環境(25度)と寒冷環境(10度)にそれぞれ30分間暴露し,皮膚温や筋温,スタティックストレッチングの筋腱伸張性への効果を調べた.スタティックストレッチングは,健常成人男性の足関節底屈筋に対し,筋機能評価運動装置を用いて30秒4セット実施した。その結果,常温および寒冷環境暴露後の皮膚温や筋温の変化には条件間で差が認められた。一方,両条件暴露後にスタティックストレッチングを実施した際には,関節可動域や足関節底屈筋受動トルクの変化に差はみられなかった。以上の結果から,寒冷環境における30秒4セットのスタティックストレッチングの実施は,常温環境と同等に筋腱伸張性を向上させる効果が示された。これらの研究成果に関しては,今年度の国際学会にて報告し,今後国際誌への投稿を予定している。
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