R3年度の研究課題では,プレッシャー下での運動スキル遂行時に,ワーキングメモリ容量(WMC)の個人差によってQET(Quiet eye training)の効果が異なるかどうかを検証することを目的とした.実験参加者10名を対象にゴルフのパッティング課題を実施した.実験では,プロゴルファーのパッティング時の視線行動の学習をした後に,プレッシャー条件と非プレッシャー条件でパッティングを実施した.なお,個人のWMCについてはストループ課題を用いて評価した.その結果,ボールの停止位置の誤差について,非プレッシャー条件とプレッシャー条件において顕著な差は見られず,ボールへのQE時間についても同様であった.このことから,QETがプレッシャー下でのQE時間の短縮を抑制しパフォーマンス低下を予防したことが推察できる.また,WMCの高い者と低い者でQE時間とパフォーマンスエラーに統計的な有意差は見られなかったことから,WMCの個人差に関わらず,QETはプレッシャー下におけるパフォーマンス低下に対する一定の効果を有することが推察された.被験者数をさらに増やして検証することに加え,今回は報酬を用いたプレッシャー条件でのストレスレベルが中程度であったため,実際のゴルフ競技が行われるグリーン上での検証も検討する必要がある.
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