我々の人体は環境変化によって様々な生理的影響を受ける。宇宙飛行士は、長期間の宇宙ミッション中に筋萎縮や骨量減少といった影響を受ける。これら宇宙滞在中の生理的変化は、宇宙飛行士が帰還した後の地上への再適応過程で問題になることがある。宇宙滞在中に生じる生理的変化を事前に予測できるかを検討し、筋萎縮や骨量減少といった宇宙滞在中ならびに地上でも生じる生理的変化を検出するためのバイオマーカーを見つけ出すことは重要な課題である。宇宙滞在という制限された生活空間では、地上のように健康診断や健康状態をモニタリングするのは難しい。そのため、被験者に侵襲性が少なく簡便に解析できる診断手法の開発が重要である。毛根は被験者から採取しやすく、生理的代謝状態を反映している。そこで、非侵襲的で簡便な診断方法の開発を目指して、毛根を含んだ皮膚組織中の因子に着目する。 そこで、宇宙滞在を想定した疑似冬眠(人工的に体温低下させる処置)を行い、体毛のミネラル成分ならびに骨量測定を行った。その結果、体毛中の数種類のミネラルに差がみられたが、骨量低下は生じていなかった。また宇宙滞在中を想定し電磁波照射を行い、マウスの行動解析を実施した。マウス行動は、電磁波照射期間が長くなるほど動き回る距離が長くなり活動が活発になった。また、電磁波照射群では暗所より明所に好んで滞在する傾向があった。
|