研究課題/領域番号 |
19K11554
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研究機関 | 弘前学院大学 |
研究代表者 |
宇田 宗弘 弘前学院大学, 看護学部, 准教授 (80549262)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マイトファジー / ニトロシル化 / ニトロ化 / nNOS |
研究実績の概要 |
骨格筋の不活動は筋の萎縮を生じさせるとともに、ミトコンドリアの機能を変化させたり、 インスリン抵抗性を生じさせたりして、エネルギー代謝にも影響することが明らかにされている。しかし、そのメカニズムは不明な部分も多い。本研究は骨格筋への機械的刺激や荷重負荷によるエネルギー代謝調節機構に関与する分子の一つとして神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)を想定し、ラットの後肢筋への荷重負荷を減少した筋において、1)nNOSのリン酸化と、マイトファジー関連タンパク質を含むnNOSと相互作用する種々のタンパク質発現の変化を明らかにし、2)それらとnNOSとの相互作用の変化を明らかにすること、また3)タンパク質中のトリプトファン残基のニトロ化が変化した解糖系酵素およびミトコンドリアのタンパク質を同定することを目的とする。2019年度は上記の目的の1)と2)を検討した。実験の結果、萎縮したヒラメ筋において活性化されたnNOSは増加するが、一酸化窒素(NO)の産生は増加しないことが明らかとなった。またマイトファジーに関与するPINK1とParkinの発現と、Parkinのニトロシル化は萎縮したヒラメ筋で変化しないことが明らかとなった。これら結果から、萎縮したヒラメ筋において、過剰なニトロシル化によるParkinの抑制は生じていないことが示唆された。したがって、2019年度の研究により、萎縮したヒラメ筋で生じるミトコンドリア機能不全には、過剰なニトロシル化によるPINK1-Parkin経路の抑制が関与してない可能性が明らかとなった。一方、目的の2)について、いくつかの方法で免疫沈降を行なって検討したが、分析できる結果は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は研究目的の1)と2)を検討し、nNOS(p-nNOS Ser 1412とSer 847)、nNOSと相互作用するタンパク質(カルモジュリン、HSP90、HSP70)、マイトファジーに関与するPINK1とParkinの発現の変化が明らかとなった。一方、本研究では増加したnNOS がマイトファジーに関与しているという仮説のもと、目的の2)のnNOSと相互作用するタンパク質の変化を明らかにすることを試みたが、残念ながら分析可能な結果を得ることができなかった。しかしながら、ミトコンドリア機能の制御に関与しているParkinのニトロシル化とニトロ化の解析を行うことにより、NOがPINK1-Parkin経路の抑制に関与してない可能性を見出すことができた。したがって、目的の2)については明らかにすることはできなかったが、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Parkinはニトロシル化によって抑制されるが、それ以外の要因によってもその機能が抑制される可能性がある。2019年度の結果から、nNOSまたはNOがPINK1-Parkin経路の抑制に関与してない可能性が明らかとなったものの、その他の要因でこの経路の機能が低下している可能性も考えられる。したがって、2020年度はPINK1とParkinの活性化の指標を用いて、萎縮筋におけるミトコンドリア機能不全に対するPINK1-Parkin経路の関与の可能性についてさらに検討し、不活動または筋への機械的刺激や荷重負荷の減少とエネルギー代謝の関連についてのメカニズムの解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費を減額することができたため、次年度使用額が生じた。この次年度使用額は実験に必要な物品の購入に使用する予定である。
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