研究課題/領域番号 |
19K11555
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研究機関 | 流通経済大学 |
研究代表者 |
向山 昌利 流通経済大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (10733785)
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研究分担者 |
松林 秀樹 平成国際大学, スポーツ健康学部, 准教授 (20453417)
中島 信博 東北大学, 教育学研究科, 名誉教授 (80005826)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メガイベント / 震災復興 / ワールドカップ / ラグビー / 釜石市 / 東日本大震災 / スポーツ / 釜石市役所 |
研究実績の概要 |
【国際競技連盟と開催都市の関係性】ラグビーワールドカップ(RWC)開催構想の想起から開催都市決定に至るまで、ワールドラグビー(WR)と釜石市行政の間には協調的関係が構築されていた。そこには、「震災復興」を結びつけることで、大会の価値を向上させたいW Rの思惑と、復興事業を推進するために開催権獲得したい釜石市の思惑の一致があった。しかし、開催都市決定後、WRは商業的成功に向けて自らの意向に沿った開催準備を強く求めるようになる。このように、WRが持つ開催都市決定権と行政が持つ「被災地」という表象がそれぞれの組織によって戦略的に活用されることによって構築された相互補完的関係性は、開催決定を機にWRの圧倒的な権力が全面に押し出される関係性に変容していた。 【政府と開催都市の関係性】釜石大会開催のためのインフラ整備を「震災復興」に向けた基盤整備としても捉えることで、そうした整備のための資金配分を正当化する政府と、開催を通じて「震災復興」のメッセージを国際的に発信するという貴重な役割を果たす行政の間にある相互補完的関係が浮き彫りとなた。つまり、復興事業の成果を発信する機会を求める政府と復興事業推進のための資金を求める行政を繋ぐ媒体として釜石大会が機能していた。 【開催都市と開催地区の関係性】開催を契機にインフラ整備を促進し「震災復興」を実現させたい行政にとって、そうした思惑を実現させるために欠かせない「住民の同意」を被災直後に獲得することは容易ではなかった。一方、生活再建を思うように進められない状況に陥った住民は、開催を引き受けることによって恒久住宅への遅延なき移転も促進できるかもしれないと期待するようになる。このように、それぞれが想定する「震災復興」を実現するために、自らの権限や役割といった資源を戦略的に活用していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス蔓延の状況によって、当初想定していたシンポジウム開催やフィールドワーク調査等を実施することができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
【国際競技連盟と開催都市の関係性】釜石大会に関する公式資料の検討と国際競技連盟や開催都市関係者へのインタビュー調査を通じて国際競技連盟と開催都市間の相互作用をより詳細に跡付ける。具体的には、大会主催者の資源活用戦略と、これまでの研究蓄積と重ね合わせ、これまで論じられることが少なかった国際競技連盟と開催都市間の相互作用の変容を、大会を取り巻く政治的・経済的・社会的文脈を視角に含みつつ動態的に解明することを目指す。なお、公式資料とは、主にラグビーワールドカップ2019日本大会大会報告書、ラグビーワールドカップ2019日本大会レポート、World Rugby annual reportである。インタビュー調査はラグビーワールドカップ2019組織委員会の構成メンバー、行政担当者に協力していただく予定である。 【政府と開催都市の関係性】前述した①ラグビーワールドカップ2019日本大会大会報告書、②ラグビーワールドカップ2019日本大会レポートといった公式資料や新聞記事の検討を通じて、省庁、日本スポーツ振興センター、ラグビーワールドカップ2019日本大会成功議員連盟の釜石大会に関する思惑と行為を浮き彫りにする。加えて、行政担当者へのインタビュー調査をもとに釜石大会開催決定から開催準備そして開催までの政府と釜石市行政との交渉過程を明らかにし、政府と開催都市間の戦略的な資源活用の相互作用の実態を解明する。 【開催都市と開催地区の関係性】これまで個別に明らかにしてきた、釜石市行政と鵜住居地区まちづくり協議会が設定する目標の達成に向けた自己資源の戦略的活用を総合的に検討することを通じて、RWCを活用する復興政策が検討され、決定し、実施されるという政策過程にあるメカニズムを「開発」の観点から動態的に明らかにする。ここでは、「開発」の主な受け手である鵜住居地区住民の主観的認識に注目して検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスが蔓延したことによって、当初予定していたフィールドワーク調査を実施できなかったため。
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