単に投球数を管理するのではなく、日々の投球によって累積される投球量と肩および股関節の筋力、肩関節関節可動域の変化にどのような関係があるのかを明らかにすることで、中・長期的に取り組まれる「肩を作る」について調査した。大学硬式野球部に所属する投手11名(20.0±0.8歳)の153日間を分析対象とし、毎回の投球前に肩および股関節の内旋・外旋筋力と肩関節可動域を測定した。また、毎回の練習中に行なわれる全ての投球場面(ブルペン等での全力投球に限らず、ウォーミングアップで行なわれるキャッチボールや、ノック中の送球も含む)において、肘内側部に加速度センサーを装着し、投球時のエルボートルクを1球毎に計測することで、投球量を記録した。そこから得られた直近数日間の投球量の累積と、肩および股関節の筋力、肩関節可動域の関係をみるために、クロス集計およびχ2検定を実施した。その結果、直近2日間の投球量が多い42例中27例で肩関節内旋筋力が高く、少ない43例中28例では肩関節内旋と投球側の股関節外旋の筋力が低かった(p<0.05)。また、8日間の投球量が多い121例中68例で内旋可動域が小さかった(p<0.05)。以上のように、肩関節内旋や股関節外旋の筋力は2日間の投球量に影響され、8日間の投球量が多いと肩関節内旋可動域が減少することが示された。一方で、投球数のみの管理では、筋力や可動域との関係がみられなかったことから、中・長期的な「肩を作る」においても投球量による管理が重要であり、安全に取り組むためには短くても8日間の累積に着目する必要があると考えられた。
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