本研究では、サッカーやバスケットボールなどのように敵味方が入り混じり、様々な方向に移動しながら競い合うスポーツ種目を対象として、各選手の加速能力の特徴を分析するものである。これまで実際の競技中に計測された膨大なトラッキングデータからその選手の特徴を可視化/モデル化する方法を検討してきた。そこでは選手の移動方向を基準として加速度の向きと大きさを移動スピードごとに区分し、その外形(各方向の最大値で構成される形状)を近似円で表現する方法を提案したが、加速度の向きに偏りが見られる場合、その特徴が失われてしまう可能性が示唆された。そこで、2023年度は、おもに楕円近似を用いた手法を提案し、その効果を検証した。 これまでの円近似と同様に、向きと大きさをもつ2次元の加速度データに対して、各方向の最大点を入力として楕円近似を行った結果と円近似を行った結果を目視ならびに平均二乗誤差および平均絶対誤差で比較した。その結果、従来の円を用いた場合と比べて、楕円を用いた方がより精度よく近似できることを確認した。これにより、各選手の加速能力の特徴をより反映した分析が可能となると考える。また、選手の加速能力を詳細に記述する加速度パターンは、円近似でモデル化する場合は、9つのパラメータのみで表現できることを示したが、楕円近似の場合は同様のパラメータ化が難しく、モデル化の可否も含めて新たな方法を検討するといった課題が得られた。
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