研究課題/領域番号 |
19K11569
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研究機関 | 公益財団法人明治安田厚生事業団体力医学研究所 |
研究代表者 |
甲斐 裕子 公益財団法人明治安田厚生事業団体力医学研究所, その他部局等, 研究員(移行) (20450752)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メンタルヘルス / 座位行動 / 勤労者 / 活動量計 / コホート研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、勤労者を対象に、活動量計によって客観的に評価された座位行動とメンタルヘルスの関係を明らかにすることである。本研究は2年間の追跡を行うコホート研究である(研究終了後もコホートとして追跡継続予定)。2019年度はベースライン調査を実施し、2020年度は追跡調査を実施した。対象者は、都内の健診センターの受診者で企業に勤務する者のうち、本研究への参加に同意が得られた約2,000名であった。調査項目は、①座位行動(10日間以上の活動量計の装着)、②メンタルヘルス(主観的幸福感、K6)、③生活習慣(飲酒、喫煙、睡眠、食習慣等)、④基本属性(年齢、性別、学歴、経済状況、職種、残業時間等)、⑤身体計測(体重、身長等)であった。なお、②~④は自記式調査票で評価し、K6は5点以上をメンタルヘルス不良と定義した。対象者のうちデータ分析が可能であった約1,000名を対象に、座位行動とメンタルヘルスの関係を横断的に検討した。その結果、平日の座位時間が長いことはメンタルヘルス不良と関連することが認められた。また平日の座位時間のうち60分を睡眠に置き換えると、メンタルヘルス不良が20.2%減少する可能性が示された。しかし休日にはこのような関係は認められなかった。さらに、座位時間を中高強度の身体活動に置き換えても、メンタルヘルス不良に対するポジティブな効果は認められなかった。本研究の対象者は多忙な勤労者であり、睡眠時間が比較的短かった。以上の結果より、メンタルヘルスを良好に保つには、睡眠不足の集団では、身体活動よりも睡眠時間の確保が優先であることが示唆された。なお、本結果は国際誌に原著論文として受理された(Kitano N, et al. 2020)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で、追跡調査の開始が1カ月遅れたが、約1,500名の勤労者に追跡調査を実施できた。ベースライン調査も追加することができ、現在までに約3,000名以上のベースラインデータを蓄積することができた。ベースライン調査のデータ整理と分析を進め、座位時間とメンタルヘルスの横断的な関連を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は引き続き追跡調査を実施予定である。ただし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況によっては追跡調査の実施が困難になる可能性がある。その場合は、追跡調査の2022年度への延期、もしくは郵送調査等、非対面による追跡調査を行う方向で検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
追跡調査での活動量計紛失を見越して、活動量計の経費を計上していたが、コロナ禍でメーカー側の生産が滞ってしまい、活動量計の購入ができなかった。ただし、コロナ禍で調査が遅れたことで、昨年度までの購入分でやりくりが可能であった。しかし、次年度は今年度遅れた分も含めて、追跡調査を実施する予定ある。そのため、活動量計の追加購入が必要である。なお、メーカー側の増産については、確認をしており、予定通り購入できる予定である。さらに、次年度は最終年度のため、成果の公表(論文、学会発表等)にも助成金を使用予定である。
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