本研究の目的は動感理解に基づいた器械運動指導のための運動観察力育成の教材開発であり、2022年度の活動目標は、前年度までの研究において収集した動きの問題点を類型化した映像資料を纏めて、技を構造的に捉える視点と動感感覚を伴う観察力育成教材をつくることであった。 この成果として『器械運動の指導と動感観察』に纏めた。本資料の制作過程において、技の技術構造の理解を図ることを意図した映像教材のプロトタイプを作成し、実技実習を伴わないオンデマンド型による映像観察学習を試行実践してた結果、外部的な視点に基づく運動形態の違いを区別することが確認された。また、「動感方向感覚」や「動感リズム」を伴った動感形態の違いを読み取ることは容易ではないことが示された。これらの課題を踏まえて内容の充実を図るとともに、発生的現象学における「脱構築」の理論を取り入れた実践的分析の方法を取り入れて、動感観察のなかで反省分析を促す問いを盛り込んだ。その一つの例は、マット運動の前転においては「踏み切り動作を制限した前転」の試行実施の問いである。また、器械運動指導において大きな課題となっている傷害問題について、跳び箱運動における「危ない動き」の映像を盛り込んでその発生様態を分析する問いも設けている。 本資料の内容は、県内教育委員会の教員研修および自主研修会を経て修正を加え、技の指導体系の基本的な考え方、具体的指導法、運動の課題と観察視点、観察演習映像を示した内容となっている。映像コンテンツの量は、コロナ禍の影響により当初計画していたものから大きく変更されて十分には揃えられてはいないところがあるために今後充実していくことが課題として残るが、教員からは評価を得ている。
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