本研究では主に小学生の器械体操(鉄棒・マット運動)を対象とし、脳波事象関連電位(ERP)・誘発電位(EP)・機能的近赤外線分光法(fNIRS)によって計測される脳活動動態を「運動学習能力の脳神経科学的バイオマーカー」として捉え、運動パフォーマンスと脳波事象関連電位や誘発電位との関連性(横断的研究)、トレーニングによって生じる運動学習能力の変化と脳神経活動の可塑的変化の関連性(縦断的研究)、運動学習過程で生じる子どもの運動イメージ形成能力に関わる脳血流動態と運動パフォーマンスとの関連を解析する。 本年度は、小学校4年生を対象とした脳波事象関連電位の実験の解析・執筆を終わらせ、その内容は国際誌「PLoS One」に掲載された。実験では、体性感覚刺激によるGo/No-go課題、聴覚刺激によるGo/No-go課題を実施し、特に運動抑制過程に関し、成人とは異なる脳活動動態を明らかにすることができた。 また、4~16歳の450名(男児227名、女児223名)を対象とした両足連続跳び越しの計測を行い、論文化した。両足連続跳び越しは10本の障害物をできるだけ速く、連続的に跳び越えていく運動課題である。ハイスピードカメラで側方から撮影し、動作時間、滞空時間、接地時間、滞空時間のばらつき、接地時間のばらつきを解析対象とした。計測の結果、幼児・小学生低学年においては、動作時間に関する有意な説明変数は接地時間であったが、年齢の増加とともに説明変数が変化していくことが示された。その内容は、現在、国際誌に投稿中である。
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