研究課題/領域番号 |
19K11578
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
船瀬 広三 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (40173512)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 運動学習 / タイミング一致課題 / 小脳抑制 / 経頭蓋磁気刺激 / 可塑性 |
研究実績の概要 |
本研究のゴールは“ヒトのタイミング制御課題学習における中枢メカニズムを明らかにすること”である.この目標を達成するために,これまで得られた知見に立脚して,タイミング制御課題学習における小脳-M1抑制(CBI)の変化について調べる.初年度は,考案した一致タイミング課題学習の前後で条件-刺激TMS法によるCBIの変化を観察することで,タイミング制御の運動学習に関わる小脳の働きを調べることとした.野球盤様の一致タイミング課題では,被験者は課題提示用のモニター上部から下部へ一定速度で移動するボールを画面上に設定したバットで弾き返し,打球が狙った位置に到達するようにバットとボールのミートタイミングを調整することが求められる.試行完了後,実際にボールが飛んだ位置と標的の位置との角度のずれをエラーとして算出する.バットスウィングはボタンを押すことで開始され,バットスウィングの速度は一定とする.まず,外乱無しの条件でエラーがプラトーに達するまで10回×必要ブロック数の課題試行を行う.その後,バットスウィングを速める(F条件),または遅くする(S条件)外乱を与え,ミートタイミングの時間的ずれに対する適応学習を行う.対照条件として,外乱無し条件,F条件,S条件をランダムに与えて,学習不能条件を設定した(R条件).この学習の前後,学習の早期・後期段階における学習とCBI変化に関連が見られるかを調べたところ,F・S条件では,それぞれ学習が進み,R条件では学習は進まなかった.学習の前後でCBIの変化を見たところ,学習の成立に伴い脱抑制が見られた.一方,R条件では学習,CBIの変化ともに見られなかった.これらの結果から,小脳が運動開始タイミングの学習に関わっていることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度計画に基づいて,概ね予定していた実験を実施し,仮説を支持する結果が得られた.なお,得られた結果を論文にまとめ,現在,国際誌に投稿し,査読を受けている状況である.
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今後の研究の推進方策 |
2年目の研究計画にしたがい,「運動速度が遅くなった結果,運動開始を早める必要がある環境に適応した場合,適応学習後CBIの脱抑制が見られ始めるタイミングが学習前に比較して早くなる」ことを仮説とし,タイミング制御課題学習を行った前後でCBIの脱抑制が見られ始める時間が前後に推移するか検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては旅費の使用額が予定金額より若干少なかったためであり,令和2年度に繰り越し,同年度分として請求した助成金と合わせて適切に使用する.
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