研究課題/領域番号 |
19K11578
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
船瀬 広三 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (40173512)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 運動学習 / タイミング一致課題 / 小脳抑制 / 経頭蓋磁気刺激 / 可塑性 |
研究実績の概要 |
本研究では“ヒトのタイミング制御課題学習における中枢メカニズムを明らかにする”ことを目的とし,タイミング制御課題学習における小脳-M1抑制(CBI)の変化について調べる.研究計画初年度は,PC上での野球バッティング様課題におけるボールとバットの一致タイミング課題学習の前後で条件-刺激TMS法によるCBIの変化を観察した.その結果,一定のボール速度において突然のバットスイングスピード変化に対応するためにバットスイング開始時点を調整する運動学習に伴うCBIの脱抑制が観察された,小脳は一致タイミング課題において運動開始タイミングの学習に関わることが示された(Tanaka et al. Exp Brain Res 239: 127-139, 2021, https://doi.org/10.1007/s00221-020-05963-z).研究計画2年度目は「バットスイング速度の変化に伴うバットスイング開始時点の学習後,CBIの脱抑制の開始時点も変化する」とした仮説検証を行うこととしていた.しかし,新型コロナウィルスの影響で,学生の学内立ち入りが禁止された時期もあり,被験者が確保できす,実験実施が困難な状況であった.10月から実験を再開したものの,バットスイング開始時点を規定するマウスクリック運動時のEMG開始前後の試験MEPのサイズ調整が極めて困難であることを受けて,研究計画を練り直し,初年度に実施した実験条件であったバットスイング速度の変化(ボール速度は一定)に加えて,ボール速度の変化(バットスイング速度は一定)後の学習によるCBI脱抑制について検討することとした.これは,ボール等の対象物を打ち返すスポーツ種目において頻繁にみられる事象であり,実践的なスポーツスキルにおけるタイミング調整に関わる小脳の運動学習機能について知見を得ることが期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度計画は,予定していた実験を実施し,仮説を支持する結果が得られたものの,研究計画2年度目は新型コロナウィルスの影響もあり,被験者の確保が困難であった.加えて,予定していた実験の問題点も判明し,実験内容を練り直した上で,研究を進めている状況である.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画2年度に予定していた実験計画を練り直し,初年度に実施した実験条件であったバットスイング速度の変化(ボール速度は一定)に加えて,野球における「チェンジアップ」等,より実践的なスポーツ場面で観察される,ボール速度の変化(バットスイング速度は一定)に対応するための運動学習後におけるCBI脱抑制について検討することとした.この条件は野球以外にも,テニスや卓球,バドミントン等の対象物を打ち返すスポーツ種目において頻繁にみられる事象であり,スポーツスキルにおけるタイミング調整に関わる小脳の運動学習機能に関する理解を深めるものと思われる.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で,予定していた旅費の執行ができなかった.次年度は本研究計画の最終年度となるので,着実な実験実施に努め,成果発表等も含めて適切な予算執行を行う.
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