研究実績の概要 |
本研究では“ヒトのタイミング制御課題学習における中枢メカニズムを明らかにする”ことを目的とし,タイミング制御課題学習における小脳-M1抑制(CBI) の変化について調べる.研究計画前期は,PC上での野球バッティング様課題におけるボールとバットの一致タイミング課題学習の前後で条件-刺激TMS法によるCBIの変化を観察した.その結果,一定のボール速度において突然のバットスイングスピード変化に対応するためにバットスイング開始時点を調整する運動学 習に伴うCBIの脱抑制が観察され,小脳は一致タイミング課題において運動開始タイミングの学習に関わることが示された(Tanaka et al. Exp Brain Res 239: 127-139, 2021).バットスイング速度の予期せぬ変化(ボール速度は一定)に対するタイミング一致課題学習前後に観察されたCBIの脱抑制現象という結果を踏まえて,研究計画後期ではボール速度の変化(バットスイング速度は一定)後の学習によるCBI脱抑制について検討した.これは,ボール等の移動標的を打ち返すスポーツ種目の実際の場面において頻繁にみられる事象であり,実践的なスポーツスキルにおけるタイミング調整に関わる小脳の運動学習機能について知見を得ることできる.結果として,移動標的速度変化に対する時間適応学習においても,研究計画前期と同様のCBIの脱抑制が認められた(Tanaka et al. Adv Exerc Sports Physiol 28: 65-73, 2023)
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