学校精神保健と地域医療の協働体制構築要因に関する研究

2019 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K11580
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 橋口 知 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 教授 (90315440)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 学校精神保健 / 発達障害 / 養護教諭 / 特別支援教育 / 地域医療

研究実績の概要

発達障害の特性は、思春期青年期に精神症状として表面化することがあるため、高等学校の学校精神保健においては、地域精神科医療機関との連携・協働は重要であるが、地域での連携／協働が円滑に行われているとはいえない状況にある。そこで本研究では、地域の高等学校と精神科医療機関の両者を対象に、連携・協働体制の構築要因の調査を行い、特に阻害要因を抽出して対策を検討した上で、地域において実用可能な書類様式などの資料を作成して試行的に使用し、学校精神保健と地域治療との協働体制構築の基礎を作ることを目的としているものである。
学校において養護教諭は、健康診断等の日常業務を通して地域医療とのつながりを持っており、また、特に高等学校においては学校精神保健の重要な役割を担っている。そこで、本研究では高等学校の養護教諭を学校側の調査の対象とした。高等学校における特別支援教育に関する先行研究としては学校内での取り組み報告が多いため、今回は特に養護教諭の視点からの課題をあげてもらうことにした。まず、県内の高等学校を、普通科のみの進学校系、進学コースも有する複数学科系、実業系の３グループに分けた。さらに、学校生活だけではなく、日常生活においても発達障害の特性を学校側が把握する可能性のある寮生活の生徒を含む場合は区別することにした。このように高等学校を分類した上で、３グループから複数校の養護教諭に対して、個別に聞き取り調査を実施した。その結果、各グループにおける発達障害の特性の表出にはそれぞれの特徴があり、それらの相違点についてデータ整理を行い、共通項目と各グループ固有項目とに分類した。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は初年度においては、過去に実施していた学校精神保健における地域医療との連携・協働における課題を中心に調査を行う予定であった。高等学校の特徴に応じてグループ分けを行い、各グループから複数名の養護教諭に聞き取り調査を実施した段階で、当初の想定以上に、生徒や所在地域医療に相違点が多く存在することが明確となった。そのため、初年度の調査方法を、紙媒体での実施は保留にし、より有益な情報が得られると判断した養護教諭への直接の聞き取り調査の実施数を増加することによって、個別のデータを得て基礎的データとなる要因の分析を行った。

今後の研究の推進方策

本研究においては、地域における学校と医療の連携・協働体制の構築要因を分析することが研究の基礎的データとして重要である。これまでの研究により、特に各学校の持つ特色によって在籍生徒の特徴に大きな差異が明らかとなったことから、当初計画よりも直接の聞き取り調査を重視することにした。前年度からの２年間で、学校と医療の連携・協働体制構築要因、特に阻害要因を明確化する計画としている。そこで、本年度も引き続き、高等学校養護教諭への直接的な聞き取り調査を継続して学校側が感じている医療機関との連携における課題を抽出して質問項目とし、地域精神科医療機関に対する調査を実施する。その結果をもとに連携・協働における実用可能な書式や体制を検討する。
学校と医療機関という新型コロナウイルス感染症対策の影響が大きい施設を本研究対象にしてはいるが、施設全体への介入研究ではなく、各施設職員に直接の調査や研究協力を得ることによって実施する計画であり、過去の事例等に基づいてのデータ提供も可能としているため、研究遂行の上での支障は大きくないものと考えている。