昨年度から引き続き、ニホンザルがトレッドミル上で四足歩行から二足歩行へ姿勢変換する際のキネマティクス解析を行った。これまでの解析から、四足歩行から二足歩行への歩容の変換は、一側後肢の接地から始まることを見出した。その接地から始まる姿勢変換期間には、体幹軸は水平位から垂直位に起き上がり、下肢の主要3関節のうち、股関節と足関節は伸展位に、膝関節はわずかに屈曲位に変位と、四足から二足歩行にむけて体幹と下肢の運動学的パラメーターが連続的に変化していくことが分かった。また、前肢の周期的運動パターンは前肢の離床とともに消失した。さらに加え、歩行周期頻度は姿勢変換期間では四足歩行に比べ有意に増加することを見出した。 上述の運動学的解析に加え筋電図データの解析結果から、四足歩行時に前肢で見られていた周期性のある筋活動運動パターンと同様に消失した。後肢の抗重力筋である大殿筋やヒラメ筋などの筋活動は四足歩行では主に立脚相にみられるが、姿勢変換期間には徐々に活動が増加することが分かった。また体幹の脊柱起立筋の筋活動を調べると、四足歩行では左右の後肢に接地に一致した短く小さな共収縮がみられるが、姿勢変換期にはこの共収縮が大きく増強し、それに加え左右の体幹のスウェイに伴う交代制の活動がみられるようになった。 これらの結果から、四足歩行から二足歩行への姿勢変換期間には、前後肢と体幹の空間的・時間的な運動学的パラメーターが徐々に変化し、それと同様に前後肢と体幹の筋活動が二足歩行にむけて連続的に変化していくことを明らかにした。
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