本年度は、上肢屈曲運動時の予測的姿勢筋活動の発達に対する、重量負荷条件による姿勢要求(実験①)、および運動経験(実験②)の影響について検討した。 実験① 被験者は、成人10名と5‐6歳の年長児5名である。被験者はLEDの点灯に反応して、両側の上肢を任意の速度で前方水平位まで屈曲し、その位置を保持した。姿勢条件は、対照条件(CTR)として安静立位にて、負荷条件では、両手手根部に体重の合計1%がかかるようにして課題を実施させた。光刺激に反応して、各条件15回ずつ課題を行った。三角筋(AD)の活動開始に対する脊柱起立筋(ES)および大腿二頭筋(BF)の活動開始時間の差を分析した。成人では、いずれの条件においてもESとBFともに、ADに対する先行活動を示した。また、BFのみに、CTRと1%で活動開始時間に有意差が認められた。一方、年長児では、ESのみに先行活動が認められ、CTRと1%の間で活動開始時間に有意差が認められた。これらの結果より、成人では、負荷に対して、ESの先行活動に加えて、BFの活動をより先行化することで適応したが、年長児では、ESのみをより先行化して適応したことを示唆する。 実験② 被験者は、5‐6歳の年長児4名である。実験①と同様のプロトコルにて、安静立位条件のみで上肢屈曲運動課題を実施させた。運動経験前後でESとBFの姿勢筋の活動開始時間を比較した。運動経験として、1日10回の上肢屈曲運動を週に3回以上、3週間実施させた。ESのみに先行活動が認められた。また、運動経験による影響がESのみに認められ、運動経験前後で活動開始時間に有意差が認められた。これらの結果は、年長児の予測的姿勢筋活動に訓練効果があることを示しているが、それが主たる制御対象であるESのみにしか認められないことを示唆する。
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