研究課題/領域番号 |
19K11593
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小宮山 伴与志 千葉大学, 教育学部, 教授 (70215408)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高強度ペダリング運動 / 有酸素トレーニング / 経頭蓋的直流電気刺激 / トレーニング効果 |
研究実績の概要 |
400m走のような高強度競技種目の成績を向上させるために、強度の高いインターバルトレーニングが実践されている。一方、この様な比較的短時間の高強度運動に対する有酸素的トレーニング効果については不明な点が多い。加えて、比較的高強度のトレーニングを実施する際に必然的に発生する中枢神経系の疲労が、トレーニング効果にどのような影響を及ぼすかについては不明な点が多い。そこで、2020年度は、約60秒間の全力ペダリング運動をパフォーマンスの指標として、5分間の比較的強度の高い有酸素的なトレーニング効果が経頭蓋的直流電気刺激(tDCS)によりどのような影響を受けるか検討した。 被験者は陸上競技400m経験者男性16名(年齢、22±2.0)であった。被験者には、実験とトレーニングの目的と方法を事前に十分に説明し、実験参加の承諾を得た後に行った。トレーニングは、3週間、3回/週で、各回につき初期負荷値(体重×0.05kp)とし、1分ごとに漸増負荷値(体重×0.003kp)し、総時間5分間、80回転を維持するトレーニングを行った。3週間の有酸素的トレーニング前後に2日以上の日を開けて60秒間の全力ペダリング運動を行った(負荷:7体重x0.075kp)。tDCSは、頭頂部に陽極、右前額部に陰極を配置し、3mA強度で15分間(陽極刺激)もしくはsham刺激(0mA)として偽刺激を行った。 結果として、陽極tDCS刺激下でトレーニングを行った群では、60秒全力ペダリングの後半層においてsham刺激群に比して有意に高いパワー維持効果が見られた。 比較的強度の高い有酸素的トレーニングでは、後半に中枢疲労が発現するものと考えられる。今回の研究結果は、この中枢疲労が陽極tDCSによって軽減された結果、60秒間の全力ペダリング運動における後半のパワー発揮維持が改善されたものと示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、60秒間の全力ペダリング運動に加え、2-3分程度の持久的運動に対するトレーニング効果と経頭蓋的直流電気刺激(tDCS)の関連を検討するよう体であった。しかし、コロナ感染症の拡大による実験の停止期間や、被験者の確保が困難となるなどの影響を受け、計画全体を遂行することはできなかった。しかし、60秒間の全力ペダリング運動に関する有酸素的トレーニング効果とtDCSの関連に関する検討は当初計画通りに実施できた。また、乳酸系エネルギー供給が非常に重要となる高強度運動と有酸素運動トレーニングとの関連、ならびにtDCSの効果を明らかにすることができた。加えて、陽極tDCSによって、有意なトレーニング効果が見られたことは、中枢神経系の疲労を軽減しながら有酸素的なトレーニングを行うことによって、400m走を想定した高強度運動の成績向上が期待できることを明らかにした点は、指導現場で重要な意味を持つと考えられる。 一方、当初予定していた脊髄直流電気刺激(tsDCS)については、上述の理由から検討することができなかった。次年度以降もtsDCS について十分な検討時間が取れない可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、本課題の最終年度となるため、800mを想定した2-3分程度、ならびに10分程度の全力ペダリング運動をモデルとして、tDCSとそのトレーニング効果を明らかにする予定である。既に、2-3分程度の全力ペダリング運動におけるtDCSの効果に関する基礎研究は終わっており、陽極tDCSによってパワー発揮の持続時間が延長することが認められている。今後、早急に10分程度の全力ペダリング運動におけるtDCSとそのトレーニング効果に関する検討を行う。そして、全力ペダリング運動の運動時間とtDCSの関連、ならびに、トレーニング効果の変化に関する定量的な検討を行う。 研究計画段階ではtDCSの刺激極性依存的な変化について検討することも考慮したが、被験者の確保が困難となる可能性も考慮し、当面は陽極刺激と偽刺激の2種類として比較検討を行うこととする。
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