研究課題/領域番号 |
19K11593
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小宮山 伴与志 千葉大学, 教育学部, 教授 (70215408)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高強度ペダリング運動 / 経脊髄直流電気刺激 / 極性依存効果 |
研究実績の概要 |
令和3年度の研究では、2分程度の疲労困憊に至る全力ペダリング運動のパフォーマンスに対する経脊髄直流電気刺激(tsDCS)の効果を詳細に検討することとした。 被験者(20名、男子10名、女子10名)には、実験目的と方法を事前に十分に説明し、実験参加の承諾を得た後に行った。運動は全て固定式自転車エルゴメータ(Combi社製、PowerMaxIII)を用いて行った。被験者は、tsDCS実施のための準備を済ませた後、5分間の1-2kp負荷でのウオーミングの後に15分間の休息を挟んで、再び負荷1-2kpによる3分間のウオーミングアップの後に試験ペダリング運動を行った。試験ペダリング運動時の負荷は男性および女性それぞれ体重の7.5%kpおよび6.5%kpとし、毎分80回転(80rpm)を維持するように指示した。被験者が80rpmを5秒間維持できなくなった時点を疲労困憊に至った時点と判断した。 tsDCSは15分間の休息中に与えた。刺激電極(5x7cm)の一方は胸髄11番-腰髄1番、他方は右肩峰部に貼付した。陽極刺激の場合には脊髄側を陽極、肩峰側を陰極とし、陰極刺激の場合には陽極と陰極をさせた。刺激強度は3mA、刺激時間は上昇相および下降相を15秒として15分間与えた。偽刺激では、15秒の上昇と下降相のみとした。 結果として、疲労困憊に至ったと考えられる80rpmを5秒以上維持できなくなった時点は、陽極刺激では123.4秒、陰極刺激では140.9秒、偽刺激では128.7 秒であった。一元配置分散により分析した結果、偽刺激と陰極刺激の数値間には有意差が見られた。また、総仕事量は、偽刺激と陰極刺激間、ならびに陽極刺激と陰極刺激間に有意差が見られた。 これれらの結果は、陰極tsDCSが下肢のリズム運動を発現させる中枢パターンの疲労を軽減した可能性を示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度の研究では、800m走を想定した2分前後で疲労困憊に至る比較的樹強度の高いペダリング運動のトレーニング効果におよぼす経脊髄ならびに経頭蓋的直流電気刺激の効果を検討する予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大等に伴い、1か月以上に及ぶトレーニング実験の実施が困難となった。 そのため、令和3年度は経脊髄直流電気刺激が2分程度の800m走を想定した高強度ペダリング運動におよぼす効果を詳細に調べた。特に、刺激極性が及ぼす効果に焦点を絞って検討を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、ヒトを対象とした実験であるため、今後の新型コロナウイルス感染症の拡大の程度によって大きな影響を受ける。 新型コロナ感染症が収束した場合には、実験計画に従って15分程度の比較的長時間の持久的運動トレーニング効果に対する系頭蓋的直流電気刺激効果を調べることとする。 一方、新型コロナウイルス感染症が再拡大した場合には、令和3年度と同様にトレーニング効果に関する実験の実施は非常に困難となる。その際には、経頭蓋的直流電気刺激が持久的な運動に与える効果について視点を変えて検討する可能性もある。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大によって実験遂行の遅れが出たため、一部の実験を令和4年度に再設定したことによる。 令和4年度の助成金は、主に実験補助とデータ整理に使用する見込みである。
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