研究課題/領域番号 |
19K11597
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
有山 篤利 追手門学院大学, 社会学部, 教授 (20530629)
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研究分担者 |
山本 浩二 関西福祉大学, 教育学部, 准教授 (60636158)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 柔道授業 / 戦術学習 / 攻防の動き / かけひき |
研究実績の概要 |
研究2年目については、COVID-19の感染拡大による影響を受け、当初計画で2年目に計画されていた尺度作成が困難になったため、3年目に行う計画であった「効果的な攻防を生む学習プログラム」の作成を前倒しして実施した。 研究初年度に取得した柔道熟練者111名の「攻防の動き」に関わるデータに対し探索的因子分析を適用し、攻防の動きを構成する4因子15項目を抽出した。4因子は、①拍子の攻防、②気配の攻防、③組み手の攻防、④間合いの攻防として命名され、それぞれの因子の解釈にもとづいて、学習プログラムの開発にあたった。学習プログラムの開発にあたっては、S県保健体育科教諭を対象に行われた柔道研修会(参加者総計45名)において予備実験を行ったのち、研究代表者・研究分担者・研究協力者によるトライアンギュレーションによる検討を実施した。その結果、①~④の攻防を「組む前の動き」と「組んだ後の動き」に分類するとともに、実際の柔道の動きに対応させることで、授業2単位時間分のドリルおよびタスクゲームによって構成されるプログラムを作成した。 次に、作成されたプログラムの効果を検証するための実験を実施した。実験はS県内の公立中学1年5クラス(男子68名、女子76名)を対象に実施され、10単位時間分の標準的な授業の後、2単位時間のプログラムを実施し、その効果を質問紙による戦術的思考の変化及び分析ソフト(Sports Code GAME BREAKER)を用いた動作分析によって把握することとした。その結果、戦術的思考において①拍子の攻防、③組み手の攻防、④間合いの攻防に学習後有意な向上がみられた。動作分析においても、①拍子の攻防と④間合いの攻防に有意な向上がみられ、組むまでの時間や顔を上げている時間が有意に長くなり、ゾーン移動回数が有意に増えるなど、作成された学習プログラムの有効性が証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19の感染拡大によって当初計画の大幅変更を余儀なくされたが、3年目の研究計画を前倒しで実施することにより、進捗の遅れを回避することが出来た。なお、2年目に行った学習プログラムの開発については、研究協力者である島根大学教職大学院所属の宝生隆志氏の課題研究を活用する形で実施することができた。 COVID-19の感染拡大により、研究に関する打ち合わせや検討会が大きく制限されてきたが、研究の根幹にかかわる協議や検討会については、感染の拡大状況に配慮しながら感染防止策を徹底しつつ対面での会議を行い、その他の連絡や打ち合わせについてはオンラインを中心に実施することができた。現在も、緊急事態宣言中により対面での打ち合わせ等は制限されているが、研究分担者1名及び研究協力者2名とは、オンライン会議やメール・SNSを活用して緊密な連携が取れている。 現在までに、当初計画していた「攻防の動き学ぶ柔道の学習プログラム」の作成とその効果検証を終えることが出来たが、現在は、その結果を研究論文にまとめている途中であり、本年秋ごろをめどに学会誌に投稿予定である。また、現状可能な範囲で、今後実施予定である「攻防の動き測定尺度」の作成に必要なデータの確保に努めている。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目については、柔道熟練者に対して実施した質問紙調査をもとに、「攻防の動き測定尺度」の攻勢に取り組む予定であったが、COVID-19の感染拡大により、ほとんどのスポーツ活動が停止したため、尺度開発に必要な調査対象が確保できていない現状がある。 本来であれば、3年目に予定していた学習プログラム作成とその効果検証を先行して実施できたため、今後に残された研究課題は、①攻防の動き測定尺度の開発、②攻防の動き学ぶ柔道の学習プログラムの動画撮影とYouTubeによる公開、③研究論文の投稿、④学会発表(発表学会は検討中)である。②③④については、2021年度中に取り組み可能と考えているが、①については今後のCOVID-19の感染拡大状況に大きく左右されることとなる。現在可能な範囲で、データ取得に向けた調査を継続しているが、今後の感染拡大状況によっては、データが確保しづらい状況が続くことも予想されるため、研究計画の延長申請も視野に入れながら研究を進める必要性があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度については、COVID-19の感染拡大により、予定していた研究会や調査の多くが取りやめとなり、出張旅費の支出が大きく制限された。次年度については、2020年度に開催できなかった研究会や調査のための出張旅費のほか、動画撮影のための費用(旅費、機材購入、謝金等)が必要となる予定である。
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