研究実績の概要 |
動きがスムーズではない子どもは対象の動きを内化しにくいのでは?という問いから、イメージ操作や変換における身体の動きに関する研究の必要性が浮上した。最終年度はそれまでに用いた尺度の妥当性や信頼性の検討、見立て遊びとイメージ操作との関連性の検討並びに論文化の作業を中心に行った。 自己制御の2側面であるエフォートフルコントロール(EC)と実行機能(EF)が注意の制御を反映することは明確になっている(Posner & Rothbart,2007)。ただし、注意の向きが外的要因(例えば文化や親の養育等)により異なってくるのではないかという考えから、交差文化的研究に着手した。SEMの結果から、日本、米国、フィリピン、ドイツ4ヶ国はいずれも、器用・不器用を表わすと考えられた運動の尺度への実行機能の影響が認められたが、ECの影響は西洋2か国で影響が現れず、アジアでのみ認められるという興味深い結果を得た。推測として、例えば自立的自己と相互依存的な自己(Markus &Kitayama,1991,1994)のような社会的信念が、親の子どもへ求める自己制御のあり方に違いを生む可能性を検討した。これは視点を他者か自己に合わせるかの違いに結びつくと考えられ、空間認知とも結びつく重要な発見であった。 また、不器用や器用について日本の保護者の意識を検討した。テキストマイニングの結果、器用さは未熟から技巧性へと進む中で用いられ、不器用さは年齢相応の基準からの逸脱で用いられることが多いと考えられた(野田, 2024)。 尚、器用・不器用を表わす運動の尺度と、VinelandⅡ適応行動尺度の粗大運動と微細運動との基準連関妥当性を求めたところ、いずれも十分に高い相関を得た。また、運動の尺度(3因子から構成されている)の内的一貫性に関して信頼性係数(アルファ係数)を求めたところ、各々充分に高い値を得た。
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