研究課題/領域番号 |
19K11607
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
川井 良介 日本大学, 文理学部, 助教 (00779928)
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研究分担者 |
奥村 基生 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90400663)
関 慶太郎 日本大学, 文理学部, 助教 (90822239)
大野 達哉 サレジオ工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (60789345)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 「押し手」と「引き手」 / 道具の操作性 / 手の内 / 剣道 |
研究実績の概要 |
本年度では、対人競技の中でも道具を介して高速かつ複雑な攻防を展開する剣道に着目し、道具の身体化に関する検討を行うため、安定状態における小手打撃動作実験を行った。 実験について、対象者は大学男女剣道選手(熟練剣道選手:熟練群、準熟練剣道選手:準熟練群)とし、対象者が被打撃者に対して実戦を想定して小手打撃を行う課題を設定した。また、実験課題をより実戦に近づけるため、小手打撃試行の中にランダムで小手空振り試行を挟んで実施した。なお、動作の分析は矢状面のみ行った(小手打撃動作は矢状面での動きが主となるため)。 結果は、準熟練群と比較して熟練群の剣先移動距離と最大移動速度が有意に大きな値を示した。また、手部移動距離については、熟練群と比較して準熟練群の方が左右手ともに有意に大きな値を示した。手部の最大移動速度については、左手部のみ熟練群よりも準熟練群の方が有意に大きな値を示した。 以上のことから、熟練した剣道選手は準熟練群と比較して、身体動作は小さいが、道具を大きく速く操作できていたことが明らかとなった。これまでの研究から、熟練した剣道選手は動作が洗練されることが明らかとなっていたが、本研究によってどのような動きが洗練された動作かを明らかにすることができた。また、対人競技における道具の操作性を検討したことで、道具の身体化に関する新たな知見を得ることができた。 今後は、変動状態(被打撃者が動く状態)において、熟練した剣道選手がどのように道具を操作するかについて検討し、道具の身体化に関する知見を蓄積していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年中に課題Ⅰ(剣道における小手打撃実験)の本実験を実施し、得られた知見は、日本体育学会において口頭発表を行った。現在、その内容の論文を執筆中である。本論文は年内にアクセプトを目指している。 課題Ⅰの成果を踏まえ、課題Ⅱの実験課題を検討中である。予備実験を行い、実験設定が定まり次第、課題Ⅱの実験を実施する予定である。 質的な側面に関わる研究については、資料(史料)から剣道における竹刀の握り(手の内)を運動学的な観点から検討し、論文化した。また、今後は打撃動作時の竹刀の握りに関して、運動学的分析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在執筆中の論文をまとめ上げるため、各研究協力者と連絡を取り合う。また、新型コロナウイルスの感染拡大が収束し始めたら、課題Ⅱの実験を行うため、各研究協力者と調整をしながら、実験設定を確認する。また、研究期間内に課題Ⅲまで実施するために、課題Ⅱと同時に実験設定の検討を進めておく。しかしながら、万が一実験ができないことも考え、質的な観点からの研究も同時に進める。 今後の流れについて、社会的に不確定な要素が多いが、どのような状況となっても研究業績を残せるよう多面的に検討を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費は、実験及び実験データを分析するためのPCを購入予定である。 旅費は、国内学会参加と研究協力者との打ち合わせの際に使用する予定である。 人件費・謝金は、実験協力者へ支払い予定である。 その他は、論文の英文校正や印刷製本に充てる予定である。
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