発達障害の児童・生徒は、動作時に「ぎこちない」、「不器用」とも表現されやすく、教育現場においても発達障害の診断を受けた児童・生徒の姿勢や体の動きが課題にあげられることが多い。海外の研究において、発達障害者が特有の眼球運動を示すことも明らかになってきており、発達障害者の動作時における問題は身体の機能的な問題だけでなく、動作や立体認知が入力される視覚情報処理の段階で、健常者と異なる捉え方をしているのではないかと考えた。そのため、本研究課題では、「発達障害児・者が動作や立体を認知するための視線行動の特性」について明らかにすることを目的として、条件1:静的な課題、条件2: 動的な「運動場面」の画像における視線行動について分析を行い、発達障害者群と障害のない群の2つの群における相違について比較検討を行った。その結果、静的および動的の2つの条件共に、障害のない層では運動方向と視線行動の順番は一致するといった共通するパターンを見出せたのに対し、発達障害者の運動方向と視線行動は関係性がみられずに個々に特有なパターンを示すことが明らかとなった。特に、動的なラジオ体操の視聴においては、障害のない群では視線が安定していたが、発達障害者では視線は広範囲に分散し安定していなかった。こうした現象は、発達障害者の動きの課題となる回旋運動や運動の切り替え時に顕著となる特性を示していた。今後、さらに研究を深め、発達障害者で起きる特有なパターンについての解析を行う必要がある。
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