研究課題/領域番号 |
19K11609
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研究機関 | 大阪商業大学 |
研究代表者 |
迫 俊道 大阪商業大学, 公共学部, 教授 (40423967)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | なぞり / さぐり / 同調 |
研究実績の概要 |
本研究の参与観察の対象は、広島県広島市佐伯区五日市町石内で十二神祇神楽を継承している石内神楽団である。石内神楽団に対する参与観察は、2019年の6月1日に開始し、9月21日まで合計10回実施した。参与観察を実施したのは、6月1日、6月15日、6月29日、7月13日、7月27日、8月3日、8月17日、8月24日、8月31日、9月21日(いずれも土曜日)である。練習場所は、7月27日は石内地区の下中集会所であったが、そのほかは臼山八幡神社の拝殿であった。 参与観察では神楽の練習をデジタルビデオカメラで撮影した。練習の一部始終を映像収録すると、映像の分析に膨大な時間が必要となる。そのため、出来るだけ指導場面に限定して映像を収集した。具体的には、指導者が学習者に舞の所作などについて助言をする状況、指導者が学習者の動きを注視する場面などを撮影した。また練習場所にノートパソコンを持参し、どの部分を映像収録したのかを記録するとともに、指導者と学習者の相互作用について気づいたことを記録した。伝統芸能の身体教育における「なぞり」と「さぐり」の構造分析に繋がる映像が収集できた。 文献研究については、国立国会図書館で身体論に関する2つの博士論文の存在を確認した。執筆者に連絡を取り、2020年2月に論文を入手することが出来た。予定していた資料収集が出来たが、入手できた博士論文の内容や参考文献のリストから、内容の確認が必要な研究資料がいくつか浮上した。インタビュー調査を2020年3月に実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を申請する時点で石内神楽団の関係者に調査協力を依頼し、その時点で承諾を得ていた。2019年度に科学研究費補助金に採択された後、関係者に研究の概要を説明し、調査協力を依頼した。事前に承諾を得ていたこともあり、2019年度の調査を順調に開始することが出来た。2019年度には石内神楽団に対する参与観察を実施した。映像資料の収集についてはほぼ予定通り実施することが出来た。 予期していなかったことは、新型コロナウイルスの影響である。研究活動に必要な出張を行うことが出来なくなった。2020年3月に国立国会図書館での資料収集を予定していたが、閉館となってしまったために、内容確認が出来ていない研究資料がある。同じ時期に身体論に関する博士論文を執筆した研究者との意見交換を予定していたが、取りやめることになった。 2020年度にインタビュー調査を実施することが困難となることも考えられた(研究計画の時点では2020年度にインタビュー調査を開始する予定であった)。インタビュー調査には入念な事前準備(予備調査を行い、十分な時間をかけて映像資料の分析や質問項目の精査)が必要であったが、時間的な制約もあり、2020年3月に2名の神楽団関係者にインタビュー調査を実施した(2020年3月18日に神楽の学び手に、2020年3月23日には神楽の指導者に対して、それぞれ約1時間、インタビュー調査を行った)。インタビューでは収録された練習の映像を提示しながら、その時の状況を振り返る「再生刺激法」を用いた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年3月に実施したインタビュー調査のトランスクリプト(音声資料の活字化)を行う。トランスクリプト作成作業は専門業者に依頼する予定であったが、研究代表者が行うことにする(活字と音声の照合作業も行う)。 2020年8月22日(土曜日)に開催される日本地域資源開発経営学会第9回全国大会において、2019年度に収集された映像資料、インタビュー調査の結果、文献研究の結果を踏まえて、研究報告を行う予定である(オンラインでの学会開催)。これまで参与観察を行ってきた石内神楽団は2020年6月の時点で活動を休止した状態が継続している。参与観察は神楽団の活動が再開された後に実施する予定である。神楽団の活動再開が難しいようであれば、2019年度に収集した映像資料から、神楽の指導・学習場面の分析を行うことにする。 2020年3月にインタビュー調査を実施したが、今後、さらに調査を行う必要性が生じている。調査協力の依頼は既に行っており、対象者から承諾も得られている。対面による調査が可能となった後に「再生刺激法」を用いた調査を実施する予定である。 2020年6月の時点で国立国会図書館は「抽選予約制による入館制限の措置」がとられている。今後、国立国会図書館の入館制限の動向を確認しながら、研究資料の収集活動を行う。国立国会図書館の利用が今後も制限されることも想定し、研究資料については身体論に精通している研究者に関連資料を所有しているかどうかの確認連絡を行い、資料の提供を依頼することも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由は「旅費」の支出が少なかったことが原因である。国立国会図書館への研究資料の収集を2020年3月に予定していた。研究会・学会参加を2020年2月と3月に予定していた。新型コロナウィルスの影響で、国立国会図書館は閉館となり、研究会や学会は中止もしくは次年度以降に延期となった。「謝金」についてもインタビュー協力者への謝礼を予定していたが、急遽日程調整を行う必要が出たため、準備が間に合わず、調査の実施を優先することになった。 今後の使用計画であるが、2020年6月において都道府県間の移動自粛は解除となったものの、当面は研究資料の収集のために国立国会図書館へ出張することは図書館の利用の制限があるために、困難である。また、学会や研究会についても現状では開催が出来るかどうか検討中である。新型コロナウィルスの終息など、今後の動静を見極めなければならないが、出張が出来る状況が整えば研究資料の収集を実施する。また、日程調整の上、専門的知識の提供を受けるための(身体論に精通している研究者との)意見交換会の実施、学会や研究会への参加を検討する。
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