研究課題/領域番号 |
19K11609
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研究機関 | 大阪商業大学 |
研究代表者 |
迫 俊道 大阪商業大学, 公共学部, 教授 (40423967)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | なぞり / さぐり / 身体教育 |
研究実績の概要 |
2021年7月10日、7月24日、7月31日、8月7日、8月21日の合計5回、石内神楽団に対する参与観察を実施した。参与観察の時間は1時間~2時間であった。「なぞり」に関する指導・学習の一部を映像記録した。参与観察を実施した際の学習者が、熟練者ではなかったため、(学習者の間違いは明白であり)学習者の躓きの要因を指導者が探る「さぐり」行為はほとんど確認できなかった。 身体教育、スポーツ科学、民俗芸能の研究に精通する者、伝統芸能の指導者と意見交換を実施した。2021年8月9日、体育・スポーツ哲学領域で身体教育に関する研究業績を有する2名の者と、オンラインで意見交換を実施した。8月19日、スポーツ科学分野で顕著な業績を有する研究者と、オンラインで意見交換を実施した。8月27日は民俗芸能に精通している研究者とオンラインで意見交換を実施した。11月7日は対面で民俗芸能の神楽の伝承に関わり、また指導的な立場でもある(参与観察の対象組織に所属していない)者と意見交換を行った。2022年3月21日は伝統芸能の指導に従事している(参与観察の対象組織に所属していない)者と、3月22日はスポーツ科学領域で身体教育について精通している者と、オンラインで意見交換を行った。 参与観察の対象組織に所属していない者に対して意見交換を実施した。「なぞり」や「さぐり」といった行為が、調査対象の組織にだけ見られる現象なのか、あるいは他の組織にも共通してみられる事象なのか、それを検証するためであった。「教える」「学ぶ」という基本的部分で共通点が確認できた。民俗芸能研究者との意見交換では本研究の独自性が、また身体教育・スポーツ科学研究者に対する意見交換からは「運動学」の「観察」に関する資料収集を行う必要性が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた研究計画では、2020年度に参与観察を行い、2021年度は参与観察の内容を精査する予定であった。新型コロナウイルスの影響のため、2020年度に実施予定だった参与観察は限定的となり、2021年度に重点的に実施する予定であった。2021年度に参与観察を行うことが出来たが、2020年度と同様に限定的なものであった(1回あたりの活動もかなり縮小された)。また、資料収集のために国立国会図書館への出張を予定していたが、これについても新型コロナウイルスの影響を考えて自粛した。 2021年度も新型コロナウイルスが収束するのかどうか不明で、2021年度も参与観察が不十分なものとなることが予測された。そのため、これまでに得られた研究成果を踏まえて、身体教育、スポーツ科学、民俗芸能の研究者との意見交換を計画し、オンラインを中心とする意見交換を実施した。2019年度にはある程度の参与観察が実施できており、神楽の練習模様の映像収録は出来ていた。映像資料を確認しながら、意見交換を行った。意見交換により、本研究と関わりがある研究内容がいくつか明らかとなった。今後、研究資料の収集を行う際に大いに役立つ情報となることが見込まれた。 2022年1月に科研費・補助事業期間延長承認の申請を行い、2022年3月に申請が承認された。期間延長は承認されたが、2022年度に1年間延長した場合であっても、2022年度に参与観察を行うことが出来るのかどうか、不透明である。そのため、2021年度に実施したように、専門的知識を有する者と意見交換を実施することを考え、調査協力の依頼を行った。国立国会図書館(東京本館)へ研究資料の内容確認、収集のための出張を2022年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に実施した意見交換の内容のトランスクリプトの作成を行う。一部の内容については、意見交換後、既に音声を文字に起こし、トランスクリプトを作成している。また、「運動学」に関する研究(「観察」)についても意見交換をする必要性が生じた。収録された映像についてもデータが蓄積されており、専門的知識を持つ者に、分析方法や整理について情報提供を依頼する。 「教える」「学ぶ」という関係については、広汎な領域で関連した議論があることが予想される。多分野との関連性を探究することも視野に入れながら、「なぞり」「さぐり」の具体的事象について身体教育に精通している者に対する意見交換が必要である。意見交換の際には、本研究に関係する先行研究、単著『芸道におけるフロー体験 増補改訂版』(渓水社、2021年)、および共著の『スポーツクラブの社会学』(青弓社、2020年)などを事前に送付した(一部、当日持参、後日送付)。特に共著の「「待つ」行為における「さぐり」―「共育」コーチングとして指導者に求められるのはどのような姿勢か」については内容確認を意見交換前に依頼したところ、貴重な意見が得られた。2022年度も意見交換を実施する前に研究業績の一部を送付しておく必要性がある。 「運動学」に関して特に「観察」という行為について、本研究と深い関連性が浮かびあがった。今後、国立国会図書館において、「運動学」に関する研究資料の内容確認を行う必要がある。また、意見交換を踏まえて研究論文の内容確認、資料の収集が必要となってくることが考えられる。必要に応じて、研究資料の内容確認・収集を行う。2022年8月に開催が予定されている第11回日本地域資源開発経営学会において、これまでに得られた研究成果について研究発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型のコロナウイルスの影響を受け、出張を行うことが困難となり旅費の執行が無かった。 次年度は、意見交換も可能な限り、対面で行う予定である。 またこれまでほとんど行うことが出来ていない、研究資料の内容確認および収集の出張を行う(国立国会図書館(東京本館)への訪問を予定)。これらの出張に伴う旅費の使用、意見交換の謝金、意見交換に利用するICレコーダー、研究資料の整理に必要となるスキャナー等の購入を予定している。
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