研究課題/領域番号 |
19K11610
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
堀井 大輔 大阪電気通信大学, 医療健康科学部, 准教授 (20340424)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 基本的心理欲求 / 運動経験 / 自己決定理論 / ベイズ推定 |
研究実績の概要 |
今年度は,運動意欲に影響を及ぼす要因に関するモデルの再構築のため,事前分布の客観性を確保しながら,多次元のパラメータの妥当な推定値を得ることを試みた.動機づけに関する自己決定理論に基づき,運動に対する三つの基本的心理欲求(有能感,関係性,自律性)を測定する尺度を作成し,各基本的心理欲求がどのような運動経験と関連をもつのかを明らかにすることとした. 対象者は,18歳から70歳までの合計549人(男性272人,女性277人)とした.本尺度は仮説の三つの因子モデルによく適合しており(GFI>0.95,AGFI>0.95,CFI>0.95,RMSEA<0.07),信頼性と妥当性が担保された(クロンバックのアルファは,有能感が0.95,関係性が0.92,自律性が0.85であった).この尺度を用いた多変量解析と重回帰分析の結果から,各基本的心理欲求と運動経験との関連を検討した. 結果として,すべての因子得点で女性よりも男性の方が高く,有能感では40歳代の人よりも18~29歳の人の方が高く,関係性では30歳代~60歳代の人よりも18~29歳の人の方が高く,自律性では30歳代と40歳代の人よりも18~29歳の人の方が高い値を示した.このように各基本的心理欲求の充足には有意な性差と年齢差がみられ,影響を受ける他者との関係性も性別と年齢によって変化する傾向が伺えた. さらに三つの基本的心理欲求と運動経験の関連では,父母やきょうだいからの影響は限定的であり,相対的に友人や部活動の影響の方が大きい傾向がみられた.つまり,運動に対する心理的欲求は,友人との交遊等でポジティブな経験をすることや,学校やスポーツクラブで自律的な支援を受けたことで充足感が高まることが示唆された.したがって,このような他者や活動領域の重要性を特定できたことによって,運動に対する支援方略や介入行動の提言にも寄与できると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
収集したデータを分析した結果について国際学会で発表し,さらに関連する論文の執筆作業を行った.しかし,新型感染症の影響もあり,被験者や補助員の確保ができないこともあって,計画通りには進まなかった.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は運動に対する基本的な心理欲求の充足についてのみ分析を行ったが,他者からの働きかけによる外発的な動機づけなど,内発的に動機づけられていない側面との関連性については考慮されていなかった.したがって,外発的・内発的動機を含めた動機づけが,人の欲求や幸福感に与える影響を明らかにすることや,人に影響を与えるプロセスを含めたモデルを作成することを検討する.それらを提示することで,運動に対する基本的心理欲求の充足や,健康へのアプローチとしての運動や身体活動の活性化,運動習慣者の割合が増加するような動機づけ方略などへの寄与が期待される.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究はおおむね順調であったが,新型感染症の影響もあり,研究発表を行った国際学会がオンライン開催となり,予算計上していた旅費等が不要となった.さらに,被験者や補助員の確保ができないことがあったため,人件費や謝金の支出額が予定額よりも少なくなった.したがって,次年度への繰り越しとなった.
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