研究課題
本研究では、既存の腸内細菌研究において、血中のモノアミン濃度を測定するとともに主観的な運動意欲や客観的な日常の身体活動レベルを評価し、それらの関係を明らかにすることを目的に実施した。本年度においては、血液中のドーパミン濃度をELISA法を用いて測定し、腸内細菌叢との関連や、運動意欲、身体活動レベルとの関連について検討を行った。対象は、20~39歳の成人男女117名(腸疾患者や整腸剤・抗生物質の服用者は除外)であった。このうち、血中ドーパミン濃度が検出可能であった111名を解析対象とした。属レベルでの腸内細菌叢と血中ドーパミン濃度との関連について検討したところ、Succinivibrio属(r=0.189. p<0.05)やAtopobium属(r=-0.192. p<0.05)など、13種の属において有意な相関が認められた。一方で、ドーパミンを産生することが報告されているBacillus属やProteus属などとの間に有意な相関は認められなかった。また、運動意欲と血中ドーパミン濃度との関連については、「運動をした後は汗をかいて気持ち悪い」の設問に対して「全く当てはまらない」と答えた群は、「あまり当てはまらない」と答えた群より血中ドーパミンが高い傾向が認められた。一方で、血中ドーパミン濃度は、客観的に評価された身体活動レベル(歩数や中高強度身体活動量)とは有意な相関は認められなかった。これらの結果から、腸内細菌叢の一部の属は血中ドーパミン濃度と関連していることが示唆され、また血中ドーパミン濃度は、運動時の主観的な感情経験と関連している可能性が示唆された。しかしながら、本研究は横断研究であることから因果関係について明瞭にすることはできず、今度は縦断研究や腸内細菌叢や血中モノアミン濃度を変動させる介入研究を実施することで因果関係の解明を進めることが求められる。
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