研究課題/領域番号 |
19K11617
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安田 従生 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (00467119)
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研究分担者 |
谷岡 利裕 昭和大学, 薬学部, 准教授 (80360585)
中澤 公孝 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90360677)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / DNA損傷・修復能 / 酸素摂取能力 / ステロイドホルモン / 第二次急伸期 / ミトコンドリアDNA |
研究実績の概要 |
本研究は、成長期(第二次急伸期直後の14歳~18歳)の女子中学・高校生を対象として、中強度持久的運動後のDNA損傷及び修復能を基準とした体細胞へのストレス耐性を酸素摂取能力、エストロゲン濃度及びミトコンドリアDNAコピー数との関連性から検討することを目的とした。研究方法として、第二次急伸期後の女子中学・高校生(14~18歳)及び男子中学・高校生(14~18歳:対照群)を対象に、自転車エルゴメーターでの最大運動負荷試験を実施し、酸素摂取能力(持久的能力)を測定した(換気性作業閾値: Tvent及び最高酸素摂取量: VO2peakの測定)。また、最大下運動(VO2peakの65%の運動強度: 65%VO2peakで60分間の自転車運動)を実施し、運動前後で唾液及び尿検体を採取した。特に、女子中学・高校生においては、エストロゲン(17β-estradiol)濃度が異なる卵胞期と黄体期で、最大下運動をそれぞれ1回ずつ(計2回)実施した。令和元年度の生化学分析として、性周期における中強度持久的運動後のDNA損傷及び修復能に関する影響を調べ(尿中8-hydroxy-2’-deoxyguanosine: 8-OHdGの定量)、成長期の女子中学・高校生における中強度持久的運動後のDNA損傷及び修復能は卵胞期と黄体期で類似しているという結果を得た。その結果に準じて、現在、尿中ステロイドホルモンレベル(エストロゲン及びテストステロン)と唾液中ミトコンドリアDNAコピー数を定量中で、段階的に各種生体マーカーにおける相互の関連性を特定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度において、すべての運動負荷試験を実施し、それに付随する酸素摂取能力の測定(換気性作業閾値: Tvent及び最高酸素摂取量: VO2peakの測定)は完了している。さらに、最大下運動(中強度持久的運動)とそれに伴う体細胞へのストレス耐性を調べるための唾液及び尿検体も採取済みである。現在までの主な生化学分析として、運動後のDNA損傷とその修復のバランスを示す尿中8-OHdGを定量し、成長期の女子中学・高校生における中強度持久的運動後のDNA損傷及び修復能は卵胞期と黄体期で類似しているという結果を得ている。その結果に準じて、現在、尿中ステロイドホルモンレベル(エストロゲン及びテストステロン)及び唾液中ミトコンドリアDNAコピー数の定量を行い、体細胞への生理学的影響を詳細に検討するため、段階的に各種生体マーカーにおける相互の関連性を特定中である。これらのことは、ほぼ研究計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度における研究結果(成長期の女子中学・高校生における中強度持久的運動後のDNA損傷及び修復能は卵胞期と黄体期で類似している)に基づき、令和2年度はDNA損傷及び修復能を基準とした体細胞へのストレス度を検討するため、各種生体マーカーの定量を引き続き実施する。特に、DNA損傷・修復能と酸素摂取能力、エストロゲン濃度及びミトコンドリアDNAコピー数との関連性に焦点を当てながら、自律神経系及び免疫系機能の定量も段階的に実施し、性周期における詳細な生理学的反応を特定していく予定である。令和元年度~令和3年度までの研究で、成長期の女子中学・高校生における部活動水準の至適設定を行うための判断基準となる“生理学的閾値”を探求していく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度における一連の解析で必要となった必要物品(試料、キット)及びその他の物品(消耗品等)で使用する予定であった一部の研究費用が令和2年度に繰り越しされ、令和2年度及び令和3年度においては、令和元年度で得た結果に基づき、引き続き生化学分析を行う予定である。また、上記の研究結果を得て、令和2年度及び令和3年度における研究費(旅費)は、国際学会での研究発表(アメリカ生理学会、アメリカスポーツ医学会、オーストラリアスポーツ医学会等)及び情報収集で必要となる経費に割り当てられる。
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