研究課題/領域番号 |
19K11622
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
藤田 勉 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (30452923)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 動機づけ / 体育 / スポーツ / 健康 / 運動 / 自己評価 / 相互作用 / 自己決定理論 |
研究実績の概要 |
2020年度は,運動中に動機づけが相互作用する動的な心理過程を解明することであった.研究方法は,言語心理学の第二言語習得研究の回顧的定性モデリング(Dornyei, 2014)という手法を応用した質問紙法であった.研究対象は大学生とした.対象者には,運動中の動機づけの評価を時間の経過と共にグラフを作成してもらい,動機づけが変化した時(上がった時と下がった時)の理由を自由記述で回答してもらった.自由記述のデータから肯定的又は否定的な用語の頻度分析により動機づけが相互作用する動的な心理過程の解明を試みた.運動中に生じた動機づけの変化の理由については,有能感,自己決定感,受容感という3つの視点を軸に解釈した.これら3つの視点は動機づけの自己決定理論によるものである.有能感については,運動の遂行に満足するか否かの記述があげられた(例,動きが良かった,上手くできた,動きに戸惑った,能力不足を感じた等).自己決定感については,運動を主体的に遂行できているか否かの記述があげられた(例,積極的にやりたい,改善するために取り組みたい,消極的だった,迷惑をかけたくない等).受容感については,周囲の言動に関する記述があげられた(例,他者のネガティブな感情,周囲の雰囲気等).これらのことは,運動中に有能感,自己決定感,受容感のそれぞれは変化することを示唆している.そして,その変化は,上がり続ける(又は,下がり続ける)ということはなく,上がればそれを維持しようとし,下がればそれを改善しようとしている.これは,対象者が環境と相互作用しながら動機づけられていることを意味している.すなわち,動機づけは動的な心理過程であることを示している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の遅れを挽回するために,急いで研究を進めてきたこともあり,予定していた調査や実験を実施することはできた.コロナ禍の影響を受け,調査や実験の中断もあり,サンプルは小さくなくなったが,それを見越して調査や実験の計画を立てていたため大きな混乱は生じなかった.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,運動に対する動機づけの改善を相互作用的な視点から試みる.具体的には,発達心理学の乳幼児研究から二人称的アプローチ(SPA)(Reddy,2008)の考え方を応用することと,Empowering Coaching(EC)(Duda,2013)の原則(自律性支援,関係性支援,有能さ支援)に基づくことにより,対象者支援型の面接及び指導を実施し,積極的且つ柔軟な関わりを実現する.2021年度もコロナ禍の影響を受けることが予想される.状況によっては,昨年度と同様,サンプルは小さくなる可能性はある.しかしながら,2021年度は実践的なアプローチになるため,大きな集団ではなく,個別あるいは小さな集団を対象とした研究を進めていくことにより,計画通りの実施が実現できると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費が予定よりも少額になったため,未使用額が生じた.この分の使用計画としては,2021年度の実験補助やデータ入力のアルバイト雇用費(人件費)として使用する予定である.
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